ロシアによるウクライナ侵攻の影響によって、アメリカの軍需企業の売上高は増加、武器輸出も大幅に増え、海外輸出の売上高は前年比で50%も増加したことが分かった。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻。この影響で世界の安全保障状況は一変、欧州を初め、世界各地で兵器の需要が高まった。その恩恵を最も受けたのが、世界最大の武器輸出国アメリアだ。POLITICOなどの報道によると、米国務省は2023年の国内の軍需関連企業の対外新規売上高が前年の2022年の520億ドルから810億ドルとなり、2022年から50%以上増加したと報告した。
最大の取引国はウクライナの隣国であるポーランドだ。ポーランドはロシアの飛び地であるカリーニングラード、ロシアの衛星国ベラルーシとも隣接しており、対ロシアの最前線に位置している。それもありポーランドはウクライナ侵攻以降、自国防衛力の強化に一層努めており、2023年は96機のAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターを120億ドルで購入したほか、486台の高機動砲ロケットシステムHIMARSに100億ドル、116両のM1A1エイブラムス戦車に37億5000万ドル、統合防空・ミサイル防衛戦闘指揮システムにも40億ドルを費やしたと国務省は10月に終了した米政府会計年度の報告書で明らかにした。ちなみに2020年には32機のF-35戦闘機に46億ドル、2021年には250両のM1A2エイブラムス戦車に47億ドルを費やしている。
ポーランドに次ぐのが以外にもその隣国ドイツだ。ドイツはメルケル政権下で防衛費を削減していたが、ウクライナ侵攻で一転、増加に転じ、軍の近代化を図っている。そんなドイツは60機のCH-47Fチヌーク大型輸送ヘリコプターに85億ドル、約1000発のAIM-120C先進中距離空対空ミサイル(AMRAAM)に29億ドルを費やした。
欧州、特にウクライナと地理的に近い中欧、東欧、北欧でも大型取引は相次いだ。チェコは24機のF-35戦闘機とそれに使用するミサイルに56億ドル。ブルガリアは183台のストライカー装輪装甲車に15億ドル、ノルウェーは6機のMH-60Rシーホークに10億ドルを費やした。
アジア・オセアニア地域でいうと最大の取引国は日本のお隣、韓国になり、25機のF-35戦闘機の追加購入に56億ドル、18機のCH-47Fチヌーク輸送ヘリに18億ドルを費やした。オーストラリアは20機のC-130J-30スーパーハーキュリーズ輸送機に63億ドルを費やした。ちなみにこれは日本の川崎重工製C-2輸送機が争っていたが、競争で敗れた。日本は2023年、5機のE-2D早期警戒機の購入に13.8億ドルを費やしている。ちなみに日本は年明け早々の2024年1月18日にアメリカと総額12.3億ドルで400発のトマホーク巡航ミサイルを取得する契約を締結している。アメリカは今年も多くの新規武器取引が控えており、2024年の対外武器輸出も好調と推測される。
好調なアメリカに対し、武器輸出国2位のロシアの対外武器輸出は減少の一途を辿っている。自国が戦争中、損失も多く、自軍の戦力回復に手いっぱいで輸出できる余力はほとんどない。そのため主要な取引国ではロシア離れが進んでおり、中国はロシアに頼っていた航空機エンジンなども内製化しており、同じくインドも兵器は内製化を進めている。内製化できない分もフランスなど西側との取引を増やしている。エジプトはアメリカから経済制裁を恐れ、侵攻以降はロシアとの新規取引をキャンセル、停止している。それは、諸外国でも広がっており、その空いた市場をアメリカを初め、中国、韓国、フランスといった国が奪い合っている。
Source
US weapons exports up 50 percent in 2023 as Washington challenges Russia, China – POLITICO