ウクライナへの西側戦車の提供。既にイギリスからチャレンジャー2、ドイツからレオパルト2がウクライナに渡っており、戦線への投入準備を進めています。当初、300両以上の西側製の主力戦車が提供されるという話でしたが、実際、どうなっているのでしょう。
チャレンジャー2
#British Challenger 2 tanks have already arrived in #Ukraine. pic.twitter.com/Oycv3tIplL
— NEXTA (@nexta_tv) March 28, 2023
真っ先に14両のチャレンジャー2主力戦車の提供を表明したイギリス。1月末からイギリス国内で始まったウクライナ兵への訓練は約2カ月に及び、3月末に訓練を終了します。それと合わせるかのように最初のバッチがウクライナへ搬入されました。当初、14両の予定だった提供数を倍の28両に増やすという情報が流れましたが、後に英国防省が否定しており、14両の予定です。チャレンジャー2は2個旅団に配備される予定ですが、戦車をチャレンジャーだけで構成する場合、数が足りないので、追加はあるかもしれません。
M1A1エイブラム
当初、アメリカは現行モデルのM1A2エイブラムスを31両提供する予定でしたが、後になって、前モデルのM1A1にダウングレードすることを発表します。ただ、これはM1A2を提供する場合、既存のM1A1を改修することになり、生産、リードタイムに時間が掛かるためと推測されます。実際、M1A2エイブラムスの月産生産能力は10両ほどとされ、ポーランドから300両以上、台湾からは100両以上の注文が入っている今、数年先まで生産ラインは埋まっている上に、ポーランドも台湾もおかれた状況を考えれば後回しにはできません。M1A1であれば、改修規模が小さく、別のラインで整備ができるのかもしれません。M1A1エイブラムスのウクライナへの提供は今秋ごろを予定しています。
レオパルト2
The Prime Minister of 🇺🇦 and the Minister of Defense of 🇺🇦 receive 4 first Leopard 2 tanks transferred by Poland to Ukraine.https://t.co/De2hHLzouN pic.twitter.com/ik4VTJJK9Y
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) February 24, 2023
当初、100両以上の提供が見込まれていたドイツのレオパルト2戦車。しかし、複雑な事情も絡みオランダ、デンマークが提供を見送るなど、実際の提供数は100未満になりそうです。
レオパルト2A6
ドイツは3月末に当初発表した数より4両多い18両のレオパルト2A6をウクライナに納入しました。2A6は最新モデルの2A7の前級モデルで、ドイツ陸軍でも現役で配備されているモデルです。今回、ウクライナに提供される西側主力戦車としては最も新しいモデルです。ポルトガルも同じく、3月末に3両の2A6をウクライナに送っています。ポルトガルは当初4両という情報でしたが、後から追加されるのか、3両に留まる形になったのか不明です。
レオパルト2A5
スウェーデンは2月、レオパルト2A5をベースに独自改良したStridsvagn 122戦車10両をウクライナに提供することを発表しています。具体的な提供時期はまだ未定です。
レオパルト2A4
レオパルト2のモデル別では最も多くが提供される見込みです。ポーランドは14両の提供を表明。2月末に4両をウクライナに送っており、3月に残りの10両を納入しています。
スペインは100両が予備役として保管されており、最大50両の提供が可能ですが、今のところ10両の提供に留めています。と言うのも保管状態が良くなく、オーバーホール、大規模な改修が必要になるためです。既に6両がウクライナに送られています。
カナダは当初、訓練用として運用していた40両の内、4両の提供を表明。2月末にウクライナに提供しましたが、その後、4両を追加、計8両をウクライナに送っています。
ノルウェーは当初の計画通り、3月に8両をウクライナに送っています。また、詳細は不明ですが支援車両4両も合わせて送っています。
Finland will hand over three more Leopard 2 armoured mine-clearing vehicles to Ukraine – Ministry of Defence of Finlandhttps://t.co/RFc9bR3fD7 pic.twitter.com/uxXeO1FG0r
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) March 23, 2023
フィンランドは当初、14両を送るという情報もありましたが、2月に3両を納入。その後、3月にレオパルト2ベースの装甲地雷除去車3両の追加を表明し、計6両をウクライナに送ります。
レオパルト1
オランダとデンマークはレオパルト2の提供を断念しましたが、その代わりにドイツとも協力し、最大178両のレオパルト1戦車を送ります。これらの戦車はドイツ、オランダ、デンマークが保有し、保管されていた車両になり、レオパルト1の最終改修モデルであるA5です。多くの車両は退役から20年近く経過しており、提供には修理やメンテナンスが必要で、最終的に何両がウクライナに供給されるのかは不明ですが、予定としては今夏までに20~25両、年末までに80両が納入される見通しで、2024年初めには少なくとも計100両以上のレオパルト1がウクライナに配備されます。他の主力戦車が第3世代戦車の中、レオパルト1は戦後ドイツが初めて開発生産した第二世代の主力戦車。主砲は最大射程3000mのL7 105mmライフル砲と、チャレンジャー2、エイブラムス、レオパルト2の120mm砲よりも威力は劣りますが、車種別としては最大の数を占めます。ロシア軍も同時代に開発されたT-62戦車の数が増えており、ロシア軍の戦力と比較しても性能的には劣りません。
チャレンジャー2 14両
M1A1エイブラムス 31両
レオパルト2 77両
レオパルト1 100両