アメリカは3日、総額21億7500万ドルにも及ぶ、新たなウクライナへの軍事支援を発表した。その中には現在のウクライナの戦術を支えている高機動ロケットシステムHIMARS(ハイマース)とM270で発射可能なGLSDB(Ground-Launched Small Diameter Bomb)、直訳すると「地上発射型小口径爆弾」が含まれている。
最大射程150kmのGLSDB
アメリカからウクライナに供与されているハイマースで現在使用されているロケット弾は慣性航法システム、GPSガイダンスを備えた最大射程90kmのGMLRSだが、今回提供されるGLSDBはその倍近い150kmの最大射程を擁する。
その射程を実現しているのがGLSDBの弾頭に使用されている精密誘導爆弾のGBU-39 小口径爆弾だ。GBU-39は本来、航空機から投下される113kgの誘導爆弾。爆弾には翼が収納されており、投下されると翼が開き、滑空飛行しながら、GPS誘導によって標的を捉える。爆弾と言いながらも、その射程は110kmにも及び、航空機は安全圏から爆弾を投下できる。GBU-39のコストは1発あたり4万ドルとされ、ミサイルよりもかなりの低コストで精密攻撃を可能にしている。
According to Politico, new US millitary aid packege for Ukrainr will likely include GLSDB munition developed by Saab and Boing. GLSDB has a range of 150 km and it can hit the target within a radius of one meter.
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) January 18, 2023
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GLSDBではこのGBU-39を弾頭として最大射程32kmのMk26のロケットブースターに搭載。発射されると上空でブースターが切り離され、航空機から投下されるのと同じように、高高度で切り離されたGBU-39は翼を広げ、滑空飛行によって標的に向かって飛行する。射程32kmのMk26のロケット、射程110kmのGBU-39合わされば単純に射程は150kmに達する。無誘導弾でクラスター爆弾を搭載するロケット弾のMk26は米国がクラスター爆弾の全廃を予定していたこともあり、処分される予定だが、GBU-39と組み合わせることで安価な精密誘導兵器として、新たな価値を見出そうとしている。
GLSDBが配備されれば、HIMARSとM270はより安全圏から攻撃が可能になると共に、その攻撃範囲は約倍になり、ロシア軍後方の補給線や兵站基地への攻撃が可能になる。前線からであれば、戦闘が激化しているウクライナ東部のほぼ全域を射程内に収めることが可能だ。南部においてもヘルソンの前線から、クリミア半島の北部沿岸域をほぼ攻撃範囲に収めることができるので、ウクライナ軍の戦略の幅が広がると共に、ロシア軍は対策が迫られることになる。しかし、ブルームバーグの報道によれば提供には最大9か月かかるとの情報も。実はGLSDBは米軍にも正式配備されていない装備であり、在庫がほぼ無いため、これからメーカーと契約、量産となるとこれぐらいの時間が掛かってしまうようだ。残念ながら春の大攻勢には間に合いそうにはない。