韓国でのKF-16戦闘機による誤爆事故はなぜ起きたのか?怠った3つの確認プロセス

KF-16(USAF)

韓国で行われていた米韓合同軍事演習の最中、韓国空軍のKF-16戦闘機が住宅地に誤って爆弾を投下するという重大事故が発生した。なぜ、このような事故が起きてしまったのだろうか。

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軍当局によると3月6日午前10時5分頃、ソウルの北、京畿道ポチョン市の行われていた米韓合同軍事演習「Freedom Shield 25」の実弾演習中に韓国空軍のKF-16戦闘機2機が投下した8発の爆弾が誤って演習場外の住宅地に落下。少なくとも民間人15人が負傷し、幸い死者は出なかったが、4人が重傷を負った。

Mk-82(USAF)

誤爆事故は2機のKF-16戦闘機が航空爆弾Mk-82をそれぞれ4発投下する過程で発生した。KF-16は、広く使用されているアメリカのロッキード・マーティン社が開発生産するF-16ファイティングファルコン多用途戦闘機の韓国空軍仕様で、1990年代に米国との契約に基づき、韓国航空宇宙産業(KAI)によって韓国でライセンス生産された。Mk-82は航空機搭載用の航空爆弾で89kgの高性能爆薬を含む重量500ポンド(227kg)クラス爆弾。兵士や陣地、車両、レーダー施設など軟目標を破壊するために設計されている。Mk-82は自由落下の無誘導爆弾になるがJDAMキットを装着することで精密誘導爆弾にする事も可能だ。

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なぜ、誤爆は起きた?

今回の誤爆の原因に関して、聯合ニュースが報じた軍当局の予備調査結果によると、事故は離陸前のKF-16戦闘機パイロットの目標地点の座標入力ミスが原因だった報告している。Mk-82爆弾の標的設定では、離陸前にパイロットが戦闘機のナビゲーションシステムと兵器システムに標的の座標を手動で入力する。飛行中、戦闘機の火器管制システムは速度、高度、飛行経路に基づいて最適な投下地点を計算する。今回、パイロットは作戦計画を受け取った際、キーボードとUSBストレージデバイスを使って目標座標を手動で入力した。この過程で入力ミスが起き、爆弾は誤った場所に投下された。しかし、誤爆はこれだけが原因ではない。

軍当局は、目標座標が間違っていた事は、本来であれば投下前の3つの検証プロセスで発見できたと述べている。一つはデバイスへの座標入力時。本来、どういう体制になっているのかはわからないが座標のダブルチェックはなかったのだろうか。今回、誤爆を起こした機体は一人乗りの単座型だった。2つ目は飛行中。そして、3つ目は目標地点に到着した時。通常、目標地点に到着した際、パイロットは座標を目視で確認する。今回、住宅地に投下されており、目視確認していれば、そこに民家がある事は分かった筈だ。しかし、これら全ての段階で確認が見落とされ、韓国軍の訓練姿勢が緩いのではないかとの懸念が上がっている。

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また、問題はこれだけではない。今回、2機のKF-16が誤爆しているが、先導機とは別の僚機の方は正しい目標座標を入力していた。まず、互いに座標を確認していれば、間違いに気づいていただろう。そして、僚機は座標が違いながらも先導機が投下した同じ地点に続けて爆弾を投下した。もし、僚機がここで不思議に思い投下を踏みとどまれば、被害はもっと少なく済んだかもしれない。パイロットが任務中に適切にコミュニケーション、状況認識できているのかという疑問が生じている。パイロット2人は、それぞれ400時間と200時間以上の飛行経験を持つベテランパイロットだった。

また、地上のレーダー要員も2機が予定の航路を若干外れているのを確認していたが、特に気に留めず、静観していたことも分かっており、韓国空軍の杜撰さが明らかになっている。今回、軍事演習が行われた場所は北朝鮮国境から20kmほどしか離れておらず、一歩間違えば、戦端の蓋が開けかねない事態になる。

合同軍事演習に参加していた在韓米軍は事故に関与していないが、今回の事故を受けて、21日まで予定していた演習は指揮所訓練(CPX)を除いて中止となった。また、韓国空軍は北朝鮮の動向を監視する警戒機などを除き、KF-16を含め、全ての戦闘機の飛行の停止を発表。少なくとも来週まで緊急時以外は飛行を制限し、全てのパイロットに再教育、飛行前の確認プロセスを強化するとしている。

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韓国でのKF-16戦闘機による誤爆事故はなぜ起きたのか?怠った3つの確認プロセス
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