中国に綿花を依存していたせいでドイツ軍の弾薬が枯渇する理由

ウクライナへの弾薬の支援を続けるドイツ軍の弾薬庫の備蓄は減っていますが、補充が全く追いついておらず、このままでは自軍が戦うための弾薬も無くなりかねない事態です。補充が追い付かない要因とされるのが中国の影響です。

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コットンリンター不足

ドイツは弾薬の推進剤に必要な”コットン リンター”を中国の輸入に頼っています。コットン リンターは綿花を採取した後の種子の表面に付いて残っている、長さ2~6mmの毛羽状繊維です。このコットン リンターは銃の大砲の弾薬やミサイルに使用される発射薬、推進剤、爆発物の一つであるニトロセルロース (NC)の主な原料になっています。つまり、コットン リンターがないとNCは作れず、それがなければ弾丸は飛びません。

ドイツメディアのDie Weltによれば、ロシアのウクライナ侵攻後、ウクライナへの軍事支援を続けるドイツのコットンリンターの輸入量は3倍に。しかし、中国からの配送は遅れており、消費に対して供給が間に合わない状態に。配送が遅れている原因としては中国のゼロコロナ政策による行動制限に伴う、生産の遅れと言われており、納期はこれまでの3カ月から倍以上の6~9カ月に遅延、弾薬製造企業が発射薬を手に入れるためのリードタイムは現在14カ月にもなっています。またロシアの友好国である中国があえて納入を遅らせている、ロシア側に融通を聞かせているという声もあります。この配送の遅れで、ドイツ軍の弾薬の備蓄は低下。NATO加盟国は30日間、戦闘を継続できる兵器システムと弾薬を備蓄するという取り決めがありますが、現在、ドイツにある弾薬の備蓄はせいぜい数日間、最悪数時間しか戦える量がないと言われています。

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世界一の綿花生産国「中国」

中国は世界第1位の綿花生産国であり、つまり世界1位のコットン リンター生産国でもあり、主要な供給国です。欧米の多くの火薬・弾薬関連メーカーは中国からコットンリンターを輸入しており、影響が長引けばドイツだけに留まらず、他の国にも影響してきます。ただ、今後、中国への依存は減っていくと思われます。中国の綿花生産の9割は人権問題を抱える新疆ウイグル自治区で生産されており、人権問題を懸念する欧米が今後、中国への依存を削減していく可能性があります。綿花の生産は2位にインド、以後、アメリカ、パキスタン、ブラジルと続いており、今回を機会に世界的なサプライチェーンの変動があるかもしれません。日本政府も自衛隊の弾薬不足の懸念に対処するため、国主導で火薬の量産体制を整備、2023年に新工場の稼働を予定しています。

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https://www.welt.de/wirtschaft/article242357017/Bundeswehr-Deutschland-fehlt-neue-Munition-und-ist-dabei-abhaengig-von-China.html

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA142CA0U2A910C2000000/

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中国に綿花を依存していたせいでドイツ軍の弾薬が枯渇する理由
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