アメリカの大統領は1日、国際テロ組織アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者をアフガニスタンで殺害したと発表した。この殺害を主導したのはアメリカ情報中央局CIAになり、殺害には暗殺用のミサイル「AGM-114R9X」が使われたとされている。
国際テロ組織「アルカイーダ」のNo2だったザワヒリ容疑者は2011年5月、ビン・ラディン容疑者が米軍によって殺害されたあとの同組織を率いて最高指導者となった。ザワヒリ容疑者も9.11の米同時テロに深く関与しており、米国は2500万ドルの懸賞金をかけるなど、ずっと行方を追っていた。米政府高官によれば、アフガニスタンの首都カブールで現地時間7月31日AM6:18ごろ、ザワヒリ容疑者が建物のバルコニーに出たところを無人機からの攻撃で殺害した。71歳だった。
殺害は米軍の無人機ではなくCIA所有の無人機
ビン・ラディンのパキスタンの潜伏場所を突き止めたのはCIAだった。2011年5月、アメリカは「ネプチューン・スピア作戦」を発動。米海軍の特殊部隊チーム6 DEVGRUをビン・ラディンのアジトに向かわせ、彼を殺害する。この詳細は映画『ゼロ・ダークサーティー』で描かれている。2019年10月にイスラム国(ISIL)の指導者アブバクル・バグダディ容疑者の殺害時もCIAがシリアでの居場所を突き止め、米陸軍の特殊部隊デルタフォースが向かい、彼を殺害した。このように、基本的にはCIAが情報収集や裏付けを行い、最終的な実力行使は米軍が行ってきた。今回もCIAがザワヒリの居場所を突き止めたようだがしかし、報道によれば、殺害に米軍は関わっておらず、CIAが所有する無人機(UAV)によって行われた。
CIAは情報機関ではあるが独自の特殊部隊も持つなど準軍事組織でもある。そして、情報を司る機関として多数の軍用偵察UAV・ドローンを所有。その中にはMQ-1プレデターやMQ-9リーパーといった武装可能なUAVも含まれており、2014年時には80機の武装UAVを所有していたとされる。しかし、これは多すぎるとしてオバマ政権時に米空軍に移管するなど削減されるも、トランプ政権時に制限が緩和されている。
暗殺に使用されたのはヘルファイアAGM-114R9X
ザワヒリ容疑者の殺害にはミサイルを使用したとされているが、ザワヒリ以外の被害者がいないというの米当局の発表だ。なぜ、被害が最小限で済んだのか?それは使用されたミサイルが暗殺用に開発された「AGM-114R9X」だったからというのが大方の推察だ。これらは空対地ミサイルのヘルファイアミサイルを改良したもので、弾頭の代わりに弾頭にブレード(刃)を搭載し、標的を切り刻むミサイルで、通称「ニンジャミサイル(ninja missile)」と呼ばれている。
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— Samir (@obretix) June 14, 2020
爆発はしなくミサイルの運動エネルギーと6枚のブレードによって対象を破壊・殺害する。爆発はしないので二次被害を最小減に抑えることができる。しかし、少しでも外せば対象を確実に仕留めることはできず、精密誘導、ピンポイント攻撃が必要になる。アルカイーダのメンバーに使用されるのは実はこれが三度目になり、2000年の米海軍駆逐艦コールの爆破事件の首謀者とされたジャマール・アフマド・モハマド・アル・バダウィ、アブ・カイル・アル・マスリの殺害、2020年6月にもアルカイーダの重要人物2名をAGM-114R9Xで殺害している。この時、ミサイルの攻撃を受けた標的の乗った車がSNSに投稿され、初めてミサイル攻撃後の様子が明らかになる。そこには切り刻まれた車と血みどろの車内内部の画像があった。
Photo by us army米軍では標的だけを殺傷するために炸裂しないミサイル「AGM-114R9X 」を開発した。これはヘルファイアミサイルを改良したもので、弾薬の代わりに弾頭にブレード(刃)を搭載し、標的を切り刻むミサイル[…]
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