埼玉県で刃物を持って暴れる男に対して警察官が発砲して、死亡してしまう事件があった。警察官は口頭による再三の警告、銃を向けての警告、上空への警告射撃を行うも、男は刃物を持って向かって来たため警察官2人はやむを得ず発砲。うち1発が腹部にあたり男は死亡した。この件に関してはネットでは「よくやった!」など肯定する人もいれば「過剰防衛だ」だと批判する人もおり賛否両論だ。報道を見る限り、警官2人に相手は酒に酔った68歳のお爺さん。警棒で制圧はできなかったのかと思ったが、詳しい状況は分からないので、なんとも言えない。発砲せざる負えない状況があったのだろう。警官の銃の使用が認められるのは、犯人逮捕に必要な場合と、警察官もしくはその他の人の防護のために必要な場合のどちらかに限られている。今回の場合は住宅街になり、その両者であろう。日本の警察が対象に発砲する際は基本は相手の動きを封じるためが目的で殺傷ではない。その為には致命傷にならない足や肩を狙うのが基本。しかし、肩の場合は水平に発砲する必要がある、外れた場合、もしくは当たっても貫通して後方へ流れ弾として二次被害が起きる可能性がある。報道の動画を見る限り道路上であったのでその危険はあったであろう。その点、足の場合は銃口が下を向くので流れ弾の危険は少なくなる。しかし、移動する相手の足を狙うのは簡単ではない、足の甲は動きが激しいし的も小さい、そして脛は細い。そうなると太ももが当てやすいが腹部と距離は近くなる。狙ったとしても動く相手に対して正確な射撃を行うのは難しい。警官の射撃訓練は年に2,3回しかないらしく、動く的に対しての訓練などは恐らくしていないだろう。例え警察官であろうと凶器を持って襲ってくる生身の人間に対して冷静な射撃はできない。そうなってくると思うのが、なぜ日本の警察はテーザー銃を配備しないのだろうと思ってしまう。
テーザー銃とは
テーザー銃とはスタンガンと銃の機能を合わせったもったような武器だ。 その歴史は意外と古く1970年代にアメリカで開発された。 テーザー社(現・アクソン)の製品が有名だったため、ひとくくりにテーザー銃と言われいる。仕組みとしては二本の電極を発射、相手に突き刺す。電極と銃の間にはワイヤーが付いており、引き金を引くとワイヤーを介して銃から電極に電流が流れ、対象者を電撃により制圧する非致死性の武器だ。射程は最大10mと銃よりは短いが、スタンガンのように直接接触することなく攻撃できる。電気ショックはほとんどの衣類を通過するので防弾チョッキを着ていても効果がある。非致死性ではあるが、絶対ではなく、対象者の健康や体調も関係する。過去には死亡事案も発生している。
アメリカ、カナダの警察や軍では使われている
アメリカやカナダの警察には2000年ごろから配備されている。だが州や管轄によって方針が異なるので全ての警察官が持っているわけではない。凶悪犯罪の多いアメリカでは銃とテーザー銃両方を保持して状況により使い分けている。犯人制圧以外にも自殺しようとする者に説得に応じない場合は保護のために使用するケースもある。野良犬などに使用したケースもある。日本でもよく、警察官が街中で動物を捕獲しようとして取り逃がすシーンはよく見るが、動物保護の観点からその点は慎重な議論が必要であろう。
なぜ、テーザー銃を配備しないのか
実は一時期、日本で一般向けにテーザー銃が発売されていた時期があった。しかし、電極の発射機構が銃刀法で空気銃に該当するとし、規制対象となったため販売禁止になった。だが、銃刀法は銃を携帯する警察官には関係はない。では、なぜ配備されないのか、いくつか理由がある。
発砲するケースが増える
非致死性、危険性が銃より少ないということは使用への心理的ハードルが下がり、配備すれば安易に発砲するケースが増えてしまう可能性がある。これはアメリカで配備される際にも懸念に上がった点でもあり人権侵害が危惧された。過度に発砲したことによる死亡事故も過去にアメリカでは発生している。基本的には極力、武器は使用せずに制圧することが大前提になるので配備に慎重になっている。
調達価格が高い
警察官が所持する現行の拳銃の調達額は7万~と思ったより高くない。方やテーザー銃は法執行機関向けのモデルは15万円と倍になる。日本の警察官は拳銃を使用するケースはごく稀なので、拳銃は摩耗、劣化しにくく、実際、今でも旧式のニューナンブM60が多数運用されているらしい。ストックもたくさんあり、部品を変えれば使える。予算の関係上、新たに配備を置き換える、追加するのは簡単ではない。今の銃の劣化を待ったとしてもだいぶ先の話だ。
使用するケースが少ない
近年、日本でも凶悪犯罪が増えてきたと言われているが、それでも犯罪発生率は諸外国と比べて極端に少なく、武装化するような凶悪犯罪者も少なく、暴動も起きない、日本は世界一安全な国の一つだ。そのような環境下で銃を使用するケースは極稀で、大抵の容疑者は警棒や体術で制圧できてしまう。そこに新たに予算をかけてテーザー銃を配備する必要性、緊急性が現状ない。
まとめ
警察庁、警視庁もアメリカの警察を視察してテーザー銃の配備は検討には上がっているそうだが今のところ配備するには至っていない。テーザー銃が配備されるときは日本の治安が悪化してきた、警察官の身に危険が及ぶ事案が増えてきたという時かもしれませんね。そうならない平和な日本であって欲しい。