映画『007』の代表的なシーンといえばオープニングです。銃口から覗いた先に現れる主人公「ジェームズ・ボンド」。そして、ボンドが銃口に向けて撃つと血が流れます。これは『007』のアイコンといってもシーンです。この銃口のシーン、実は本物の銃口を使って撮影していたってご存じですか?
初代『007』から変わらぬオープニング
シリーズ1作目の『007は殺しの番号 ドクターノオ』が公開されたのは今から50年以上前の1963年になります。初代ジェームス・ポンド役はショーン・コネリーが演じていました。この時のオープニングがこちらになります。
左から白い点が現れ、右端までいくと、点は銃口に変わります。すると銃口の先にボンドが現れます。このシーンは暗殺者がボンドを狙っているという設定で、狙いを定める銃口はボンドの動きに合わせて動いていきます。狙われていることに気づいたボンドは銃を抜き反撃、そして暗殺者は血を流します。そこからお馴染みの007のテーマが流れるというシーンです。そこから、2015年に公開された『007 スペクター』までの間に改良、変更は加えられていますが、基本的な構成は変わっていません。
カメラで銃口を覗いている
このオープニングを考案したのは1作目の撮影を行ったモーリス・ビンダー監督、そして1作目から現在も007の制作に関わっているイギリスの制作会社Eon Productions(イオンプロダクション)が制作しています。ビンダー監督はこのオープニング案を僅か20分で考案して絵コンテにします。そして、撮影手法として実際の銃口をカメラのファインダーで覗く方法を考えます。使用した銃は38口径のバレルでした。 しかし、この時、問題が発生します。単純にカメラで銃口を覗く形では、ライフリングを含めた銃筒全体に焦点を合わせることができなかったのです。そこで、監督が作成したのがピンホールカメラです。これにより、ライフリングもクリアに映るあのシーンが撮影されます。
しかし、時代と共に…
モーリス・ビンダー監督は1991年に亡くなります。ビンダー監督の死後に最初に制作されたのがピアース・ブロスナンが5代目ボンド役を演じたシリーズ17作目『007 ゴールドアイ』(1995)です。しかし、この頃は既に映画業界はCGが当たり前。007でもCGは使われ、これまでの実物からCGで作成された銃口に変わってしまいます。コンピュータ生成された銃口はライフリングの旋条螺旋の濃淡変化をより強調したデザインになります。更に『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002)ではCGの弾丸が追加されます。
こちらに歴代の『007』のオープニングをまとめた動画あります。時代と共に演出が変わってきており、007の進化が分かると思いますよ。
2020年公開『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
2020年11月にはシリーズ25作目となる最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開されます。是非、オープニングの銃口シーンを注意してみてみてください。