1500発のロケット弾が撃ち込まれたが、アイアンドームは何発撃墜した?

イスラエルとパレスチナの衝突が激しさをましている。パレスチナは3日間で1500発のロケット弾をイスラエルに向けて発射。それを迎撃するイスラエルの防空システム「IRON DOME(アイアンドーム)」の様子がSNSなどに多く投稿され、その命中率の高さが注目を浴びた。映像を見る限り、アイアンドームから放たれた対空ミサイルが全て迎撃に成功しているように見えるが、実際はアイアンドームの配備以上の飽和攻撃により全ての迎撃はできていないようだ。

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アイアンドームの命中率は100%ではない

実際、11日には480発のロケット弾が発射されたが、内、迎撃したのは200発強と約半分だ。アイアンドームはレーダーとミサイルランチャー構成されている。レーダー1基につき、ミサイルランチャーは最大4基まで配置可能で、ランチャーは20連装になる。つまりアイアンドーム1セットに付き80発のロケット弾に対応できることになる。イスラエル国防軍は(IDF)はアイアンドームを15基配備しているとされており、つまり、1200発の同時飽和攻撃に対応できるという計算だ。全基フル装填なら、一日500発のロケットを迎撃することは問題ないはずだが、そうはいかない。まず、アイアンドームに使われるTamir(タミル)ミサイルの射程は4kmから最大70kmになり、その範囲でしか迎撃はできない、国土を全てカバーするには限界がある。また、一か所に数百発撃ち込まれれば、例え範囲内であっても対処しきれない。

そして、男女ともに徴兵制が布かれるイスラエルいえど、軍は人員不足に陥っており、希望する数のアイアンドーム配備が出来ていない。そのため、配置される場所は人口密集地や軍事施設など重要施設がある場所など限定的になる。

また、映像では全弾命中に見えたが、命中率は100%というわけではない。IDFの発表によると2011年の採用以降、アイアンドームの命中率実績は85~90%になる。つまり、1500発中、150~175発は撃ち漏らすことになる。実際、今回の攻撃に対して、全ての撃墜はできなかった事をIDFは認めているし、空襲警報が鳴る中、街中に着弾する映像もSNSには投稿されている。また、パレスチナ側もレーダーに捉えにくいように低弾道で撃ち込んでおり、これまでのロケット弾と比べても飛距離が伸びるなど改良されている。
(ちなみにメーカー元のラファエル社は2020年に改良した最新モデルの命中率は100%と謳っているが、それが実際どの程度配備されているのは不明だし、実戦での実績も少ないでその成否は今後の運用結果次第だろう。)

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ロケット弾は格安

イスラエルとパレスチナ。一見、国家同士の戦争にみえるが、実際は正規軍(IDF)とテロ組織(ハマス)という構図になる。いわゆる非対称戦争で国力には雲泥の差がある。世界でも有数の軍隊であるIDFに対し、ハマスには戦闘機や精密誘導弾といった高い武器は買えず、安価な武器に頼るしかない。誘導弾ではないロケット弾は構造が簡単で安価に製造でき、安い物は一発あたり500~600ドルとされている。1000発作っても50万ドルだ。資金に乏しいパレスチナでも大量生産、購入が可能だ。それに対し、精密誘導兵器であるアイアンドームのタミルミサイルのコストは非常に高い。単価は公表されていないが1000発のロケット弾を迎撃するのに必要なコストは4000万ドルといわれている。1000発あたりの価格差は実に80倍だ。単純なロケット弾と違い、センサーや半導体を必要するミサイルは直ぐに大量生産とはいかないし、予算的な都合もある。安価なロケット弾を引き続き大量に撃ち込まれれば、IDFは資金的に疲弊し、軍の金庫は空になる。もちろん、そうなる前にIDFは強硬策にでるであろう。

2014年の大規模衝突の時はパレスチナ側は7週間で4,564発のロケット弾と迫撃砲を発射した。それを考えると1,500発というのはまだ序章かもしれない。

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https://www.thedrive.com/the-war-zone/40572/continuous-mass-rocket-attacks-pose-new-challenges-for-israels-iron-dome-system

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