ロシアが併合を宣言し、占領下に置くウクライナ東部ドネツク州の都市マケエフカで1月1日、ウクライナ軍の攻撃によってロシア兵400人が死亡するという出来事がありました。これは一度の攻撃の被害としては今戦争最多の死者になりますが、そこにはロシア軍のお粗末な行動があったとされます。
新年を祝って、兵士たちとシャンパンを飲むプーチン大統領
— ミリレポ (@sabatech_pr) December 31, 2022
ロシアでも乾杯はシャンパンらしいpic.twitter.com/iZUHbmSL9q
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は年末を迎えても終わる兆候はなく、戦闘が激しさを増す中、年を越え、2023年を迎えました。ロシアにとって新年は年間の最重要イベントであり、プーチン大統領はフランス産のシャンパンを片手に兵士と共に新年を祝う様子を公開、そして、彼らを背景に「祖国の防衛は、先祖と子孫に対する神聖な義務だ。われわれの行動は道徳的、歴史的に正しい。家族とロシアのために勝利する。」とロシア国民に訴え、ウクライナへの侵攻を正当化、継続する発言を行いました。
新年のお祝いはロシアが一方的に併合した戦時下であるウクライナ東部ドネツク州の都市マケエフカでも行われていました。ここにはロシアのサラトフから徴収された動員兵で主に構成されたロシア軍大隊が駐留していました。彼らは新年を祝うべく、戦時下の中、大晦日、兵舎として利用していた校舎に数百人が集合し、NewYearパーティを開催していました。
UPDATE 4: Of course there's video of the #HIMARS launch that annihilated hundreds of Russian soldiers partying on #NewYear in occupied #Makeevka. Incredible. pic.twitter.com/7QFHJWfQLR
— Igor Sushko (@igorsushko) January 2, 2023
マケエフカはロシアの侵攻前から親露派が掌握しており、まだ戦場にはなっていなかった場所で、比較的平穏な地帯ですが、ウクライナ軍とロシア軍が激戦を繰り広げている最前線から20~30kmしか離れていません。ウクライナ軍はこのパーティ情報と会場の位置をキャッチ。年が明けた直後、おそらくパーティが最高潮に達したであろう00:01に高機動ロケットHIMARSによってパーティー会場を攻撃します。HIMARSの射程は80kmであり、余裕で兵舎を射程内に収めます。
#Aftermath & analysis of the #rubble after #Russian barracks in #Makeevka that had a visit of #HIMARS. Particularly touching is the unconstrained conversation of the #rescuers behind the scenes – and you there, did you celebrate the #NewYear?#RussiaIsCollapsing #Ukraine️ pic.twitter.com/aWxxaTYeB3
— Erik Korsas (@KorsasErik) January 2, 2023
計6発の精密ロケット弾を発射。2発はロシア軍の防空部隊に迎撃されるも、4発が兵舎に命中します。兵舎には弾薬庫と武器庫もあり、誘爆。一帯は完全に破壊されます。ウクライナ側の発表によれば、この攻撃によってロシア兵400人が死亡、300人が負傷し、大隊は全滅します。あまりにも被害が大きかったこともあり、ロシア国防省も攻撃があったことを認めています。しかし、ロシア側の発表は63人の死亡とウクライナとロシアの発表とでは被害に大きな差異があります。戦争では戦果は誇大に、被害は過少に発表するものなのですが、少なくとも数百人が被害にあったのは間違いないかもしれません。ロシア側の発表の数だけでも一度の攻撃による戦死者としては今回の戦争では最多です。
しかし、戦時下の中、敵の射程内で兵士数百人が集まってパーティを開くとはあまりにも不注意過ぎます。攻撃してくれと言っているようなものです。酒を飲んで騒げば、調子にのってSNSに投稿する兵士もいるでしょうし、軍属ではない人も居た可能性もあります。ドネツクがロシア、及び親露派が実効支配する地域と言えど、完全掌握しておらず、占領地域の中には反露の人民はおり、ウクライナのスパイもいるでしょう。数百人の兵士が集まってパーティなんて開いたら情報が洩れる、攻撃されるリスクは容易に想像がつく筈です。大隊の指揮官は生き残ったようなのですが、責任を感じたのか、それとも、その後の処罰を恐れたのか、自殺したという情報もあります。
兵士を一か所に集めた軍の行動に対し、ロシア国内からも批判が巻き起こっています。