SPP-1MピストルとAPSアサルトライフルなど、水中銃の先駆者であるロシア。この2つの銃は水中で高い殺傷能力を有する分、地上での殺傷能力を犠牲にしており、非常に使い勝手が悪い銃になる。ADSアサルトライフルはそんな水中銃の使い勝手の悪さをクリアした水陸両用ライフルになる。
水中銃は地上では使い物にならない
一般的なアサルトライフルの殺傷能力の範囲は200~500mになる。しかし、水面、または水中で撃った場合、弾丸は水圧と水の抵抗によって、殺傷能力は2m未満までに下がる。水中から攻撃、もしくは水中にいる敵に向かって撃っても有効な打撃を与えることはできない。しかし、水中銃のAPSアサルトライフル(写真上)を使えば水中でも30mの範囲で敵を殺傷することができる。これを実現するのは専用に開発された水中弾で、一般的な弾丸と比べ全長が長く、先端がダーツのように尖った特殊な形状をしている。そして、特別に設計されたチャンバー、バレルからはライフリングを無くすなど、特殊な構造を施した結果、水の抵抗を減らし、水中でも一定の射程を実現させている。
しかし、それと引き換えに、地上での威力を犠牲にしている。地上での射程は100mと他のアサルトライフルと比べると極端に短い。更にライフリングがないことで弾丸の安定性は悪く、精度が低くなってしまっている。そのため、水中から目標地点にせっかく上陸しても地上戦ではあまり役に立たな銃になってしまっている。水中任務を行う特殊部隊は水中銃の他にAK-74など通常のアサルトライフルを携帯するなどして補ってはいるが、装備過多になってしまっていた。ADSアサルトライフルはこれらの問題に対処するために開発された。
通常弾と水中弾が使用できる水陸両用アサルトライフル
APSアサルトライフルの最大のネックは特殊な専用水中弾を使用する点だ。弾薬に合わせて、チャンバーなど発射機構も設計されている。ADSではそれを止め、チャンバーをAK-74と同じ、5.45x39mm仕様にし、5.45x39mm弾とAK-74マガジンと共通性を持たせた。弾薬は同じ口径の5.45x39mmPSP水中弾を開発。PSP弾はAK-74マガジンに納めることができる。APSと比べ、若干威力は劣るもののPSP弾の威力は水深5mで25m、20mで18mの射程をほこり、精度はAPSよりも上回っている。地上での威力は不明だが、APSと違う点は通常の5.45x39mm弾とAK-74マガジンが使える点であり、地上に上陸した際は、通常の5.45x39mm弾が入ったマガジンに換えればいいだけだ。通常弾での地上での射程はAK-74と代わらない500m、発射速度は600~800発/分になる。地上での精度はAK-74Mを上回っている。
これらの性能により、水中任務を行う特殊部隊はADS水陸両用アサルトライフルのみを装備するだけでよくなった。
その他、スペック
ADS水陸両用アサルトライフルはロシアのKBP器械製造設計局によって2007年から開発が始まり、2013年から運用が開始された。発射機構を後方に置く、ブルパップ式を採用し、全長685mmとコンパクトに納めながら、バレル長はAK-74と同じ415mmになる。クローズドボルト方式を採用。キャリングハンドルにはピカティニーレールが採用され、光学照準器が取り付けできる。バレル下にはVOG-25対応の40mmグレネードランチャーが内蔵されている。グレランの射程は400mだが、水中での使用については言及されていない。おそらく水中での使用はできないものと思われる。銃口にはサプレッサーが装着できる。
2013年から運用は始まったが、量産化は2021年からと最近になる。
Source
https://rostec.ru/news/rostekh-pristupil-k-seriynomu-vypusku-noveyshego-podvodnogo-avtomata-ads/