自衛隊の主力小銃の歴史を振り返る

自衛隊の主力小銃の歴史を振り返る
出典:陸上自衛隊

2020年に20式5.56㎜小銃が登場し、自衛隊の小銃は新しい時代に入る。そこで、これまでの自衛隊の主力小銃の歴史を振り返ろうと思う。

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戦後で日本の小銃の歴史はいったん途切れる

太平洋戦争に敗北した日本は戦後、軍は解体、武装解除される。保有していた兵器は海外であれば現地の軍に接収され、国内にあったものは解体または廃棄、GHQに接収された。日本陸軍の主力小銃であった、三八式歩兵銃や九九式小銃ももちろん接収された。わずかな数だけは残され1950年に創設された警察予備隊に支給されている。その後、1954年に警察予備隊は自衛隊に改編され、陸上自衛隊と海上自衛隊が誕生する。しかし、この時、日本の兵器産業は解体されており、自衛隊に配備できる国産の小銃は無かった。

M1/M2カービン(1954年~)

M1/M2カービン
Photo by Joseph Berger

国産の小銃が無い中で自衛隊に最初に配備されたのは第二次大戦中の米軍の主力小銃「M1/M2カービン」だ。大戦時の日本の小銃はボルトアクションだったが、M1/M2カービンは半自動小銃で火力で圧倒し、且つ短いバレルは取り回しも良く日本軍を苦しめた。M1/M2カービンは警察予備隊の時から配備されていたもので7.4万挺が米軍から支給されていた。それがそのまま継続配備された形だ。米国が生産を止めた後は少数が国内で製造されている。

口径7.62㎜
重量2,490g
全長904㎜
銃身長(バレル)458㎜
弾丸7.62×33㎜弾
装弾数15/30発
射程距離300m

AGM M1カービン エアコッキング(FW) AGMM1A

M1ガーランド(1954年~)

M1ガーランド
Photo by crazyad0boy

M1/M2カービンと同時期に配備された「M1ガーランド」。これも大戦中の米軍の主力小銃だ。M1ガーランドは実はつい最近まで自衛隊内で現役で利用されていた。配備されていた部隊は儀仗隊だ。2019年5月に国産の豊和工業の新儀仗銃が登場するまで長きに渡って儀仗銃として活躍していた。

口径7.62㎜
重量4,300g
全長1,108㎜
銃身長(バレル)610㎜
弾丸.30-06スプリングフィールド弾(7.62x63mm)
7.62x51mm NATO弾
装弾数8発
射程距離450m
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64式7.62mm小銃(1964年~)

64式7.62mm小銃
出典:陸上自衛隊

終戦から19年後の1964年に初めて国産の「64式7.62mm小銃」が自衛隊に配備された。開発したのは愛知県にある豊和工業。戦前から三八式歩兵銃、九九式小銃を製造してきた日本を代表する銃器メーカーだ。M1/M2カービンの整備や国内生産も同社が請けおっていた。その会社が戦後、満を持して開発したのが64式7.62mm小銃だ。国産ということもあり、日本人の体格に合わせて設計された。口径は当時の米軍と同じ規格の7.62x51mmを採用する(1960年に米軍はM16を採用し5.56mmが標準になりつつあった)。23万挺以上が製造され、陸海空自衛隊に配備された。現在もまだ現役であり、7.62x51mm弾を使用するその威力と射程をもってマークスマンライフル、狙撃銃としての役割を担っている。

口径7.62㎜
重量4,300g
全長990㎜
銃身長(バレル)450㎜
弾丸7.62x51mm NATO弾
装弾数20発
射程距離400m

S&T 64式小銃 G3電動ガン(電子トリガーシステム搭載) STAEG358

89式5.56mm小銃(1989年~)

89式5.56mm小銃
出典:陸上自衛隊

現在の自衛隊の主力小銃「89式5.56mm小銃」。64式7.62mm小銃の後継として豊和工業が開発した。米軍が5.56㎜口径のM16を採用してから、NATOといった西側陣営は5.56㎜が主流となり、1970年代には5.56x45mm NATO弾とSTANAG弾倉がNATOの標準になっていた。それから遅れること10年あまり、1989年より5.56㎜規格の小銃の配備が始まった。パーツには強化プラスチックが採用され軽量化、部品点数も大幅に削減され、メンテナンスは簡素化。銃身は短くなり、機動性が向上、ストックは固定式と空挺部隊用に折畳みできる折曲銃床式の2つが作られた。これまでに延べ14万挺以上が製造された。しかし、近年は海外の主力小銃と比較すると旧態化していた。

口径5.56㎜
重量3,500g
全長916㎜(固定銃床式)
670㎜(折曲銃床式折畳み時)
銃身長(バレル)420㎜
弾丸5.56×45㎜ NATO弾
装弾数20/30発
射程距離500m

東京マルイ No.6 89式5.56mm小銃 固定銃床型 18歳以上ガスブローバックマシンガン

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20式5.56mm小銃(2020年~)

20式5.56mm小銃
出典:防衛省

89式の登場から31年後、ようやく新しい「20式5.56mm小銃」が2020年に登場した。開発は引き続き豊和工業だ。89式は現代では標準のレールシステムが搭載されていなかったが、20式にはピカティニーレール、M-Lokが搭載されスコープやレーザーサイトといった追加アクセサリーの装着が容易に、グレネードも装備できるなど拡張性が大幅に向上された。ストックは伸縮式になり、体格に合わせて調整が可能となっている。ようやく世界のスタンダードに追いついた形だ。2020年度中に4,000挺が調達される予定で、最終的には89式と同程度の15万挺の調達を予定している。今後随時、89式から20式に切り換えられていく。

口径5.56㎜
重量3,500g
全長780㎜(銃床縮小時)
850㎜(銃床伸長時)
銃身長(バレル)330㎜
弾丸5.56×45㎜ NATO弾
装弾数30発
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出典:豊和工業ここ数年検討に上がっていた自衛隊の新しい小銃「20式5.56mm小銃」が2019年12月に正式に採用が決定。翌年の5月には完成品がお披露目された。新小銃は2021年度から陸上自衛隊に随時配備されていく予定になっている[…]

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