米海軍が配備する空対潜航空魚雷HAAWC

米海軍が配備する空対潜航空魚雷HAAWC
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アメリカの軍需企業ボーイング社は8月20日、アメリカ海軍から自社が開発した高高度対潜兵器「HAAWC」のフルレート生産契約を授与されたことを発表しました。契約額は2,560万ドルになり、今後、数週間以内に量産が始まります。2024年9月までに完了する予定です。

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HAAWCとは

High Altitude Anti-Submarine Warfare Weapon Capability(高高度対潜兵器能力)の略である「HAAWC」はその名の通り、高高度で利用可能な空対潜兵器で、高高度を飛行する航空機から投下可能な空対潜航空魚雷システムになります。

HAAWCは艦艇搭載用の既存の対潜魚雷にアドオンキットを装着する形で実現されます。ベースになっているのは米海軍で使用されている対潜水艦用短魚雷のMk.54です。12.75インチ(324mm)の軽魚雷はMk 32 短魚雷発射管やアスロックシステムから発射可能で、艦載兵器として運用されています。パッシブ/アクティブ音響ホーミングを搭載、9kmの範囲で標的を追跡、撃沈します。Mk.54は艦艇の他、P-3オライオンやP-8ポセイドンといった哨戒機、SH-60 シーホークといった哨戒ヘリにも搭載可能で、空中投下可能な魚雷として既に運用されています。では、なぜ、HAAWCが必要なのでしょう。

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高高度から投下可能

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哨戒機や哨戒ヘリで魚雷を投下する場合、目標地点に正確に着水させるのと、水面落下時の衝撃を和らげるため、高度30m以下の低高度まで降下し、パラシュートを付けた状態で投下する必要があります。しかし、このような運用は投下までに時間を有するのと機体に負担をかけ、危険に晒すことになります。これらの課題を解決すべく、高度を下げずに投下できる航空魚雷として開発されたのがHAAWCです。Air Launch Accessory (ALA)と呼ばれるウィングキットをMk.54に装着。高高度から投下すると、HAAWCは翼を広げ目標海域まで滑空飛行します。海面近くになるとALAを分離し、パラシュートが開き、着水、標的を追跡します。高高度から投下して滑空飛行しながら誘導される仕組みは同社が開発製造する無誘導爆弾を精密誘導弾に変換する変換キット「JDAM」と同じで、それを魚雷に応用したものと思われます。

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P-8Aポセイドン用の兵器

US Navy

HAAWCは今のところ、ボーイング社が開発製造する哨戒機P-8Aポセイドン用の兵器になります。P-8ポセイドンは小型旅客機のボーイング737をベースにした哨戒機で、8300kmの航続距離を擁す長距離飛行可能な対潜・対地哨戒機として、情報収集、監視・偵察、捜索救助を目的に2013年から米海軍に配備。アメリカのほか、オーストラリア、イギリス、インド、ノルウェー、韓国、ニュージーランド、ドイツが運用、150機以上(2022年7月時点)が生産されています。HAAWCはP-8Aの後部ウェポンベイに最大5発が搭載される予定です。標的と投下位置情報はP-8A ポセイドン コントロールステーション ユニットからHAAWCにデータ転送されるようになっています。投下位置への誘導はGPS誘導になりますが、GPSが使えない場合でも精密誘導できる設計になっています。

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Source

https://www.navalnews.com/naval-news/2022/08/boeing-receives-haawc-full-rate-production-contract-from-u-s-navy/

https://seapowermagazine.org/navy-orders-full-production-for-boeings-haawc-air-launched-torpedo-kits/#:~:text=%E2%80%94%20The%20Navy%20has%20awarded%20Boeing,submarine%20torpedoes%20from%20high%20altitudes.

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