領空、および台湾海峡の空域を45年に渡って守り続けてきた中華民国空軍(ROCAF)のF-5E/F タイガーII戦闘機はその役目を今年一杯で終えます。
ROCAFは1960年代にアメリカの支援を受けて初期モデルのF-5A/Bフリーダムファイターを採用、1970年代には改良型のF-5E/F タイガーIIのライセンス生産を開始するなど、1960年代から、ROCAFの主力戦闘機として配備されます。全盛期には5つの飛行隊に配備、1980年代まで主力戦闘機を務めますが、現在、その座はF-16に譲っています。今は主に訓練機と使用されていましたが、その座を2024年以降は国産のT-5 ブレイブイーグル高等ジェット練習機に譲る予定で、その役目も終えます。ただ、偵察用に開発されたF-5Eの派生型であるRF-5Eは現役を続けます。
台湾のF-5戦闘機
F-5はアメリカのノースロップ社が1950年代に開発した第三世代の音速戦闘機です。小型で軽量、初期モデルのF-5A/Bフリーダムファイターはレーダーを搭載しないなど高度な電子機器を排除した安価でシンプルな設計により、整備や訓練も容易ということもあり、アメリカの同盟国や西側の国の中でも資金力に乏しい途上国に多くの機体が輸出されます。1970年代にはレーダーを搭載した改良型のF-5E/FタイガーⅡが登場。韓国や台湾など複数国にライセンス提供を行い、計2,000機以上が生産されました。
台湾ではアメリカと開発元のノースロップグラマン社の協力を得て改良型であるF-5E/F タイガーIIのライセンスが付与され、1973年から国内生産を開始。242機のF-5Eと66機のF-5Fが生産され、台湾では「中正号戦闘機」と名付けられます。アメリカから供与された初期のF-5A/Bと合わせると調達数は500機を超え、F-5の総生産量の4分の1を占めるなど最大の運用国です。
老朽化していたF-5
F-5E/Fはスイス空軍、韓国空軍、ブラジル空軍など他の国でも近代化改修を行い未だ運用が続いていますが、近年、老朽化もあり、事故が多発しています。2020年10月にはROCAFのF-5EタイガーⅡが墜落、パイロットは脱出、救助されたものの、その後、死亡。2021年3月には同じくROCAFのF-5EタイガーⅡ2機が訓練中に衝突。2名が脱出、一人が死亡、一人が行方不明になります。事故は台湾だけではなく、2021年5月末にはスイス空軍のF-5EタイガーⅡが墜落。2022年11月には韓国空軍のF-5Eが墜落、パイロットが死亡しています。韓国では2000年以降、少なくとも15機が事故を起こしています。台湾では1989年に生産が終了し、部品の交換ができないF-5の老朽化は度々指摘されていました。1990年代にF-16とミラージュ2000が配備されると第二線級戦闘機に退き、老朽化、事故が多発したことで第二線級戦闘機からも退き、最近は訓練機と運用されていましたが、国内メーカーの漢翔航空工業(AIDC)が生産する国産の高度ジェット練習機T-5ブレイブイーグルの量産が始まったことで、その役目も終えます。T-5は66機を調達予定です。
Source
https://www.chinatimes.com/realtimenews/20231128003726-260417?chdtv