アゼルバイジャン軍とアルメニア軍との戦闘でアゼルバイジャン軍の軍用機アントノフAn-2が地上からの攻撃で撃墜された。驚くべきはアントノフAn-2が未だに戦場で使用されている点だ。ジェット機全盛の時代にAn-2は前世紀に開発されたプロペラ複葉機だからだ。
戦後にソ連で開発された複葉機
アントノフAn-2は戦後の1947年にソ連のアントノフ設計局によって開発された複葉機である。もともとは農業、林業用の農薬散布機として開発された。しかし、その高い耐久性、高い揚力性、滑走路を必要とせずに離発着できる利便性から短距離での輸送・旅客機、そして軍用機としても人気を博することになる。2001年まで製造が続けられ、2万機近い機体が製造されている。耐久年数も長く、現在も中古市場で売買され、年型によって値段は大きく異なるが6,000ドルから3万ドルと格安で取引されている。
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軍用機で人気の理由
An-2は1950年代の朝鮮戦争、1960年代のベトナム戦争で軍用機として投入されている。ベトナム戦争では北ベトナム軍が機銃やロケットを装備して攻撃機とし使っていた。1991年のクロアチア独立戦争ではクロアチア空軍がその場しのぎの爆撃機として使用している。しかし、航空機、対空兵器が発展した現代では、プロペラ複葉機のAn-2に対空、対地攻撃能力はほぼないといっても良い。航続距離も300kmと長いわけでもない。なぜ、こんな期待が未だに軍に人気で利用されているのだろうか?
An-2の機体はほとんど木と布でできている。つまり、装甲は貧弱で機銃数発を受ければ一溜まりもない。ただ、金属パーツが少ない分、レーダーに探知されにくいという利点ある。そして、最大のメリットは滑走路でない場所でも離発着が可能な点だ。現代の航空機は整地された滑走路が無いと離発着できないため、作戦範囲は空港がある場所に縛られるがAn-2にはそれがない。平らな土の上、機体は小さいので道路でも離発着できる。
この2つの特徴を利用して、旧ソ連や東側の国はAn-2を空挺部隊用の航空機として使用している。レーダーに探知されず、敵領空内に侵入し、空挺部隊を投下。長い道路があれば離発着できるので着陸して回収することもできる。乗員2人に最大10人の兵士を乗せることができる。
An-2を軍用機として使用している主な国
ロシア
ロシア連邦軍では空挺部隊用にAn-2を使用しており、訓練では度々登場する。An-2は雪上、氷上の上でも離発着できるのでシベリアといったインフラが整っていない地域でも運用ができ、未だに需要は多い。
北朝鮮
北朝鮮の空挺機動歩兵旅団と呼ばれる特殊部隊がAn-2を使用しているとされている。その数は200機にも及ぶ。航続距離は300kmしか無いので、韓国へ空挺部隊を送り込むための機体であり、道路環境が整っている韓国であれば大抵の場所に着陸できてしまう。
アルジェリア
冒頭でアルジェリア軍のAn-2が撃墜されとお伝えしたが、実は機体は無人機で人は乗っていなかった。アルジェリア軍ではAn-2を遠隔操作可能な無人航空機に改修している。偵察機、若しくはカミカゼドローンとして運用されていたと推測される。アルジェリア軍には少なくとも50機のAn-2があるとされる。
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