米国防総省は2日、アメリカ空軍がノースロップ・グラマン社に対し、同軍のB-2スピリット・ステルス爆撃機部隊の維持と能力強化を継続するため、最大70億ドル相当の契約を結んだと事を発表しました。この契約がおそらく、B-2スピリット最後のアップグレードになると思われます。
米国防総省と米空軍はノースロップ・グラマン社に対し、B-2スピリット戦略爆撃機の保守および近代化契約として推定70億ドル相当と推定される大型契約を締結。この契約には「B-2の機能強化、維持、エンジニアリング、ソフトウェアメンテナンス、サポート機器を含むロジスティクス要素」が含まれており、B-2が展開・配備されているミズーリ州のホワイトマン空軍基地、オクラホマ州のティンカー空軍基地、ライト・パターソン空軍基地、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地、ユタ州のヒル空軍基地を含む全ての空軍基地での保守・近代化作業が行われると規定されています。アップグレードの詳細は明らかにされていませんが、ステルス機能とミッション計画ソフトウェアという2つの重要な分野に焦点を当てているとされています。
1機あたりの回収コストは3.5億ドル
現在、運用されているB-2スピリットは20機しかありません。今回の契約額が70億ドルなので、つまり、単純計算で1機あたりの保守・改修費用は3.5億ドルです。第5世代ステルス戦闘機F-35Aの最近の価格が8000万ドル前後とされているので、1機分の改修コストは4機分のF-35Aに匹敵します。B-2は改修を行う上で胴体パネルを開く必要がありますが、機体に施されたステルス コーティングを除去しなくてはパネルにアクセスできません。そのため、ステルスコーティングの除去と再塗装という面倒で高額な工程がかかります。改修は2029年までに全機終える計画です。これだけ高額な費用をかけて改修するB-2ですが、2030年代初頭での退役を予定しています。そのため、今回の契約がB-2最後のアップグレードと推測されています。
B-2の後継、B-21レイダーの生産が始まっている
B-2スピリットは冷戦下、ソ連の防空網を突破するために開発、1997年に米空軍で運用が始まったステルス戦略爆撃機で、核兵器搭載可能な唯一のステルス爆撃機です。ステルス性を最大限発揮するために尾翼を失くし、ブーメランのような形状のフライングウィングレイアウトを採用しています。当初、132機を生産する計画でしたが、高性能化した機体はコストが上昇、当初、1機あたり7億ドルだった機体価格は20億ドルまで上昇し、世界で最も高価な軍用機となります。運用コストもバカ高く、結局21機の生産に留まっています。運用効率が悪いことから、米空軍は後継のステルス戦略爆撃機の開発に着手。2022年12月に「B-21レイダー」を発表します。2023年11月には初飛行を達成、2024年1月には初期量産承認が下り、低レート生産が始まっています。B-21はB-2のコストの約3分の1となる7億ドルとされ、100機の生産を予定。2030年代初頭からの配備を計画、それに伴いB-2スピリット、B-1ランサーの両爆撃機は退役、その後はB-21とB-52の2機体制になります。