黒海の石油採掘施設を巡るウクライナ軍とロシア軍の攻防

黒海の石油採掘施設を巡るウクライナ軍とロシア軍の攻防
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ウクライナ国境警備隊はロシア軍が占領する黒海の石油採掘施設ボイコ・タワー(boyko towers)を攻撃し、同施設を制圧したと発表した。ロシア軍はここに対空ミサイルやレーダーを設置し、軍事施設化するなどしており、ウクライナはここを無力化するため、攻勢を強めている。

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ウクライナ国境警備隊は10月5日、ウクライナ軍と国防省情報総局との共同で、黒海の要衝ズミイヌイ島周辺でロシアが占領していた複数の石油・ガス掘削施設ボイコ・タワーを奪還したと映像付きで発表した。国境警備隊は「国家保安庁の特殊部隊は内務省の部隊と協力し、黒海で敵のガス生産プラットフォームを撃退している。多大な努力により、我々の海上要塞の役割を果たすこれらの戦略的に重要な施設の一部が捕獲され、制圧された。これらの整備により、水域の大部分をコントロールし、防御を強化することが可能になる。」と述べた。ボイコ・タワーを巡る攻防は昨年から激化している。

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ボイコ・タワーとは

石油・ガス掘削施設であるボイコ・タワーはウクライナの国営エネルギー企業ナフトガスの子会社であるチェルノモルネフテガスによって黒海に埋蔵されている石油と天然ガスの採掘を目的に建設された。2013年には16億5100万立方メートルの天然ガスを生産している。同社はソ連時代1979年に創設された国営企業だが、クリミアに本部を置いており、ソ連崩壊によってウクライナの国営企業傘下になった。しかし、2014年にクリミア議会によって接収され、ロシアのエネルギー企業ガスプロムの傘下に。その後、ロシアによるクリミア侵攻と併合により、ロシア企業となっていた。

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クリミア半島の西、黒海西部には12の採掘施設があり、ロシアによるウクライナ侵攻以降、同施設にはロシア兵が常駐。黒海の監視及びヘリコプター発着場や長距離・防空ミサイルシステム基地として利用されており、黒海におけるロシア軍の目としてウクライナ軍の活動を制限していた。

ウクライナ軍が2022年6月にロシア軍から黒海の要衝ズミイヌイ島を奪還すると周辺にあるボイコタワーへの攻撃を開始。2023年9月にはその一部を奪還、管理権を取り戻した発表。特殊部隊員が乗り込み、施設にあったロシア軍の装備品を運び出す様子を公開している。2023年時点では4つの採掘施設を制圧したとウクライナ側は発表している。ただ、おそらく兵士は常駐しておらず、無効化というのが正しいかもしれない。その後も、ウクライナ軍は残りの施設の奪還を試みているが、今年9月初旬に行われた奪還作戦は失敗したと報道されている。ロシア国防省は黒海の掘削リグを占拠しようとするウクライナの試みを阻止したと主張。ウクライナ軍14隻の船のうち8隻を沈没させ、80人のウクライナ軍人が死亡したと発表している。ウクライナ軍はこの時、ロシア空軍のSu-30多用途戦闘機を船上から放ったMANPADSで撃墜している。

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今回、ウクライナ国境警備隊が制圧を発表したボイコタワーがどこの施設であるかは明らかにされていないが、ズミイヌイ島周辺にあったものとされている。撮影時期は不明で夏場に取られたものとの情報もあるが、どちらにせよ、新たな戦果になる。黒海を警戒監視していたロシア海軍の黒海艦隊はクリミア半島から東部のロシア本土に撤退しており、ボイコタワーが黒海西部を監視する上で重要な役割を担っていた。これを失えば、ロシア軍は黒海西部での目を失うことになる。艦隊も居ないため、同施設を再び制圧することは困難だろう。ウクライナ軍はこれらを無効化できれば、黒海での活動が容易になり、計画されているとされるクリミア半島上陸作戦の障害を一つ取り除くことができる。

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