イスラエル軍はF-35Iステルス戦闘機でイランに空爆を行ったのか?

IDF

ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏が7月31日、イラン新大統領就任式に出席した後、イランの首都テヘランで暗殺された。情勢から考えればイスラエルの仕業と思われるが、イスラエル側は何も発表していない。気になるのが敵地であるイランでどうやってハニヤ氏を暗殺したかだ。イスラエルの諜報機関モサドによる犯行、またはF-35Iステルス戦闘機による空爆ではないかといわれている。

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レバノンのヒズボラ系メディア「Al-Mayadeen」は、匿名のイラン当局者の発言を引用し、ハマス指導者がイランの新大統領就任式に参加した後、テヘランの自宅で”海外から発射されたミサイル”で暗殺されたと伝えた。ハマス側はイスラエルの空爆によってハニヤ氏が死亡したと伝えている。しかし、イラン側はミサイル攻撃は認めているものの空爆の主張を認めていない。それはそうだろう。もし、首都テヘランが空爆されたと言う事であれば、自国の防空網の脆弱性を内外に露呈することになる。仮に空爆が事実であってもそれを認めるわけにはいかないだろう。現状、空爆あった事を示す動画や画像は一切ない。イスラエル軍もハニヤ氏の死亡報道についてコメントを拒否しており、関与の有無を明かしていない。しかし、現在のイスラエルとハマスの戦争状態を考えれば、イスラエルの仕業と考えるのが妥当だ。

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F-35で1700km離れたフーシ派拠点を空爆

仮にイスラエルによる空爆だった場合、F-35Iアディールが使用されたのでは推測されている。F-35Iアディールは第5世代ステルス戦闘機F-35のイスラエル軍仕様機だ。イスラエルは1週間前にイエメンにあるフーシ派の石油施設など軍事拠点に対しF-35Iアディールで空爆を実施している。F-35Iは最新鋭のステルス戦闘機であり、敵のレーダー網を掻い潜り、敵陣深くに潜入できる。フーシ派は武装組織だが、イランの支援によって防空レーダー、防空ミサイル、F-5戦闘機を配備している。敵の防空レーダーに検知されたかは分からないが、撃墜されることなくF-35Iは空爆を成功させている。そして、更に興味深いのが攻撃した場所がイスラエルから1700km離れた距離にあった事だ。これだけの距離を飛行して、空爆を成功させた。イランの首都テヘランはイスラエルから1500kmの距離にある。つまり、F-35Iによってテヘランも攻撃可能である事を事前に実戦で立証した形だ。

基本モデルのF-35Aの戦闘半径は1200kmとされており、空中給油機の随伴なしでは1700kmの拠点を空爆することはできない。しかし、空中給油機はステルス機ではなく、随伴させれば、検知されるリスクが高まり、空中給油機が攻撃される可能性がある。F-35に外部燃料タンクを追加する方法もあるが、そうなるとF-35のステルス性能を犠牲にする事になる。ただ、フーシ派への攻撃の際は事前にサウジアラビアに領空の通過を申請。サウジアラビアはこれを許可していた。つまり、イエメンの国境近くまでは、給油機を伴い飛行できたと言う事だ。攻撃には非ステルス機のF-15、F-16も参加している。

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もし、テヘランの空爆にサウジアラビアが自国の領空をの通過を認めれば、テヘランまで1000kmぐらいまでの距離まで空中給油機を伴う事ができる。その後はステルス機のF-35Iのみでイラン領空に侵入して空爆を行う事ができる。

ただ、イランとサウジアラビアは2023年3月に国交正常化に合意したばかりであり、その状況下でイラン攻撃のために領空通過をサウジアラビアが認めるとは思えない。そうなると、シリアとイラクの領空を通過する飛行経路になるが、この両国が領空の通過を認める筈はない。ただ、F-35I単独飛行であればどうだろう。2022年6月のイスラエルメディアの報道によれば、イスラエルは独自にF-35Iを改修し、航続距離の延長を行い、単独飛行でイラン国内の標的を攻撃する能力を得たと報道している。その改修内容は明かされていないが、ステルス性軽減を最小限に抑えた外部燃料タンクの開発との推測もある。

ただ、ステルス機といえど、完全に見えないわけではない。イランは対ステルス機用にロシアから「Rezonans-NE」レーダーを購入、配備している。この超高周波ステルス対策早期警戒フェーズドアレイ レーダーはステルス機の検出が可能といわれており、ロシア国営メディアのTASS通信は2020年8月、イランに配備された同レーダーが領空外の米軍のF-35の検知に成功した述べている。もちろん、これらは情報戦の側面もあるので、真偽は不明だ。

イスラエル軍機がイラン領空に侵入して攻撃を行ったとすれば、状況をかなり激化させる。先日にはイランが支援するレバノンの武装組織ヒズボラの司令官がイスラエル軍の空爆で死亡したばかりだ。ハニヤ氏の暗殺はイラン国内に侵入したスパイ(モサド)の犯行という見立ても強い。隣接たてものから対戦車ミサイルを発射したとの報道も。しかし、アメリカを始め、地域情勢が激化するのを恐れ、真相が明らかにする事に慎重になっている。これ以上、中東情勢が悪化しないことを祈るばかりだ。

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