今年初め、アメリカ海軍の電子戦機EA-18Gグラウラーが空対空ミサイルを使用し、イエメンの武装組織フーシ派の無人機を撃墜していた事が分かった。EA-18Gにとっては初の空対空戦による撃墜記録になり、電子戦を主任務とする空母搭載型電子戦機としても初の記録だ。
It is tradition that aviators affix “victory marks” on aircraft indicating successful engagements against, for example, bombs dropped, missiles launched, drones destroyed, and boats destroyed. pic.twitter.com/lcP2NfzQ4v
— Chowdah Hill (@ChowdahHill) July 14, 2024
この出来事は7月14日、米海軍によって発表された。初の撃墜を記録したEA-18Gは中東の紅海に派遣されていた原子力空母ドワイト・D・アイゼンハワーに配属されている同海軍の第130電子攻撃飛行隊(VAQ-130)の機体になり、同空母が9か月間に及ぶ紅海でのミッション中に起きたと発表している。
「ザッパーズ」という名でも知られる第130電子攻撃飛行隊は紅海とアデン湾の商業航路をフーシ派の執拗な攻撃から守るために他の部隊と協力し、海軍や同盟国に不可欠な空中電子戦能力を提供していた。ドワイト・D・アイゼンハワー空母打撃群は日曜の声明で、同飛行隊はイエメンのイラン支援反政府武装勢力を標的とした複数の攻撃を実施し、その能力を低下させるため数百回の戦闘任務を遂行したと述べ、「海軍史上初めて空対空で撃墜を達成したグラウラー飛行隊」となったとも述べた。
米海軍によれば、9か月間の任務中、ザッパーズのグラウラーはイエメンのフーシ派支配地域に7回の攻撃を実施したほか、フーシ派の船舶交通を脅かす能力を弱めるために約700回の戦闘出撃を行ったという。海軍はグラウラーが排除したフーシ派の脅威について具体的には明らかにしていないが、アイゼンハワーの司令官がSNSに投稿したビデオには、空母の飛行甲板に配備されたグラウラーの側面にドローンの撃墜マークが記されているのが確認されている。また、空対空戦ではないが、今回の任務中、AGM-88E対レーダーミサイル (AARGM) を初めて戦闘に使用。地上に駐機してあったMi-24/35 ハインド攻撃ヘリを破壊している。
EA-18G Growler
EA-18GグラウラーはF/A-18F スーパーホーネットを電子戦用に改良した機体で高度な電子戦機能を備えた電子戦ポッド、妨害装置ポッド、レーダーシステムからの電子送信を捕捉する受信アンテナポッドを搭載。これらの強化により、グラウラーは敵の防空システムを検出、妨害、破壊することができる。
AGM-88 HARM 空対地ミサイルを装備しており、レーダー施設の破壊も任務としている。空対空戦用としては射程100km超えの中距離空対空ミサイルAIM-120 AMRAAMを装備。また、今回の紅海での任務に当たり、フーシ派の攻撃ドローンに対抗するための「緊急対応」プログラムの一環として、短距離空対空ミサイルのAIM-9X Sidewinderを統合しており、今回の初の撃墜記録はAIM-120かAIM-9のどちらかが使用されたと推測される。