12月26日、ウクライナ空軍はロシア占領下のクリミア半島フェオドシアでロシア海軍の大型揚陸艦ノヴォチェルカッスクを破壊しました。これは、2022年の本格的な侵攻以降、ウクライナ軍が破壊、または深刻な損傷を与えた22隻目のロシア海軍艦艇となります。これはウクライナ海軍がほぼ機能していなく、大規模な海戦が行われていない現状を考えれば異例の戦果です。ウクライナ海軍は侵攻当初に主要な艦船を失っており、更に旗艦であったフリゲート艦ヘーチマン・サハイダーチヌイをロシア軍に拿捕、若しくは撃沈されるぐらいならと自沈させています。侵攻前からウクライナ海軍と黒海に駐留するロシア海軍黒海艦隊との戦力比は明らかでしたが更に戦力差は拡大します。しかし、ウクライナ軍のその戦力差を純粋な海軍力でやりあうのではなく、ドローンや自爆無人艇、地上、空中からのミサイルといった非対称な方法で戦果を挙げてきます。ここでは、ウクライナ軍が破壊したロシア海軍黒海艦隊の艦艇を振り返ります。
2022年
3月7日
小型ミサイルコルベット 「ヴェリキイ・ウスチュグ(Velikiy Ustyug)」 は、BM-21のロケット弾の攻撃で損傷し、戦闘不能となり、修理のためカスピ海に移動されました。
3月20日
Відео знищення бійцями полку «Азов ворожого катеру пр. 03160 «Раптор». pic.twitter.com/IEADt4TlAk
— Azov Brigade (@azov_media) March 22, 2022
P-342哨戒艇オレグ・シピツィン(Oleg Shipitsin)は、3月20日にアゾフ海で対戦車ミサイルの攻撃によって損傷しました。
3月24日
大型揚陸艦サラトフは、ザポリッジャ州ベルディアンスクの占領都市でウクライナ軍によってトーチカUミサイルで破壊された。
同じ攻撃は、ベルディアンスクの大型揚陸艦ノヴォチェルカスクを損傷させた。乗組員3人が死亡したと報告された。
大型揚陸艦シーザー・クニコフにも被害を与えた。その船の船長は死亡したと報告された。
4月14日
Russian Black Sea Fleet Prj. 712 sea rescue tug Shakhter (SB-922) alongside the Moskva pic.twitter.com/9LIkERQxLY
— OSINTtechnical (@Osinttechnical) April 18, 2022
4月13日、ウクライナ軍は国産の巡航ミサイル「ネプチューン」を使用して黒海艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦モスクワを攻撃。火災が起き、翌日には船が沈み始め沈没しました。ロシア国防省は沈没を公式に認め、27人の行方不明者と17人の死亡したと発表しています。
5月
ウクライナ軍は5月、黒海の西にある孤島スネーク島の攻撃を行います。ここは侵攻初日にロシア軍に占領されていました。ウクライナ軍はトルコ製の無人攻撃機バイラクタルTB2を投入。5月だけで高速強襲揚陸艇、セルナ級揚陸艇、3隻のラプター級揚陸艇と5隻の船を破壊しました。
6月17日
ウクライナ軍は、スネーク島近海でロシアの救助タグボート「ワシリー・ベク(Vasiliy Bekh)」をハープーンミサイル2発で沈めました。救助タグボートですが、甲板には対空ミサイル、スネーク島に物資を運んでいました。
10月29日
#Ukraine: Remarkable video of today's attack on the Russian Sevastopol Naval Base.
— 🇺🇦 Ukraine Weapons Tracker (@UAWeapons) October 29, 2022
Ukrainian Uncrewed Surface Vessels (Drone boats filled with explosives) apparently managed to hit a Project 11356R frigate (presumably Admiral Makarov) & the Ivan Golubets Project 266M minesweeper. pic.twitter.com/6nJVkwvgKW
ウクライナ軍はセヴァストポリ湾に対して海上および空中から無人機攻撃を行いました。その結果、2隻の船が損傷し、使用不能となります。使用不能となったのはモスクワ撃沈後に黒海艦隊の旗艦となったフリゲート艦アドミラル・マカロフ。そして、掃海艇のイワン・ゴルベッツです。アドミラル・マカロフは2023年9月に曳航される様子が確認されており、自律航行は不可能な状態とされています。
2023年
5月24日
ユーリー・イワノフ級諜報艦イワン・クールスは、 ボスポラス海峡から140km離れた黒海でウクライナ軍の自爆無人艇3隻の攻撃を受け、内、1隻が衝突、損傷しました。
8月4日
ロシア南部の黒海に面するノヴォロシースク港付近に停泊していた北方艦隊所属で黒海艦隊に編入されていたロプーチャ級揚陸艦オレネゴルスキー・ゴルニャクがウクライナ海軍の自爆無人艇の攻撃を受け大破。船体に大きな穴が空き、船体は傾き、自律航行できない程の損傷を受けました。
8月5日
シリアに展開するロシア海軍のために燃料を運んでいたロシアの石油タンカーSIGをウクライナ軍の自爆無人艇が攻撃。タンカーは損傷します。これにより、ロシアの黒海を使用した輸送が停滞します。
9月3日
#Ukraine: After time absent, the Ukrainian Bayraktar TB2 UCAV is back – a Russian KS-701 patrol boat unloading equipment was destroyed by a TB-2 strike reportedly in the North-Western part of the Black Sea. pic.twitter.com/37110TYgpQ
— 🇺🇦 Ukraine Weapons Tracker (@UAWeapons) September 3, 2023
黒海北西部で荷降ろしをしていたKS-701「チューネッツ」 型巡視船を バイラクタルTB2無人攻撃機で破壊しました。
9月13日
クリミア半島のセヴァストポリの乾ドックで修理を受けていたバルト艦隊所属で黒海艦隊に編入されていたロプーチャ級揚陸艦ミンスクがウクライナ軍の「ストームシャドウ/SCALP」ミサイルによる攻撃を受け、船は修復不可能な損傷を負いました。この時、同じ乾ドックではキロ級潜水艦ロストフ・ナ・ドヌーも修理を受けており、同艦も同じく修復不可能な損傷を受けます。
11月4日
ウクライナ軍はクリミア半島東端のケルチに向けてミサイル攻撃を実施。これにより、黒海艦隊の最新鋭艦の一つであるカラクルト級コルベット艦アスコルド(Askold)が損傷しました。同艦は2021年9月に進水したばかりの船で就役に向け、テスト中だったとされています。
11月9‐10日
二日にかけて、ウクライナ軍は クリミア半島に自爆無人艇攻撃を実施。プロジェクト11770セルナ級強襲揚陸艦、少なくとも 2隻に損害を与えました。
12月26日
クリミア半島フェオドシヤに停泊していたロシア海軍のロプーチャ級揚陸艦ノヴォチェルカッスクがウクライナ軍のミサイル攻撃を受け、完全に破壊されました。同艦はイランからの弾薬を自爆ドローンを運んでいました。ロプーチャ級大型揚陸艦の損害としては実に3隻目です。
ロシア海軍黒海艦隊は直近4か月で、約20%の戦力を失ったとされています。