携行型、肩撃ち式の対地・対戦車ミサイルは大抵、ジャベリンやカール・グスタフのように円柱状の形状しているが、ドイツ連邦軍が新しく採用するEnforcer(エンフォーサー)は珍しい四角柱の形状をした携行型誘導兵器システムだ。
ドイツ連邦軍最新の携行ミサイル
Enforcer(エンフォーサー)を開発するのはヨーロッパに本部を置く、多国籍ミサイル企業MBDA。MBDAはフランスのエアバス、イタリアのレオナルド、イギリスのBAEシステムズといった蒼々たる軍需企業のミサイル部門が合併して2001年に創設された企業だ。
ドイツ連邦陸軍の歩兵携行式ミサイルは無反動砲のWirkmittel90(RGW-90 MATADOR)が使用されている。Wirkmittel90の射程は1200mと兵士が安全な距離から狙うには射程が短く、兵士を危険に晒す危険性があるのと無誘導弾であったため動的ターゲットを狙えないなど精度に難があった。そこでWirkmittel90を補完する新しい携行型ミサイルの開発がドイツ軍主導のもと2014年に開始され、2016年12月に発射テストに成功。2019年12月にドイツ軍とMBDAとの間で正式契約が結ばれ調達が決まった。
スペック
Enforcerは中間距離の攻撃能力を埋めると共に、軽装甲のターゲット及び障害物の背後にいる人的ターゲットや施設の破壊、隠れた敵の狙撃兵といった長距離からの脅威に対抗することを目的に開発された。射程に関してはWirkmittel90の1,200mから、2,000mと広がっており、兵士は安全なスタンドオフからの攻撃ができる。精密誘導弾が使用でき、静的から動的ターゲットまで昼夜関係なく攻撃が可能になった。照準、誘導の光学機器は取り外し可能な外部システムを使用する。弾頭は誘導弾、無誘導弾の双方が使用可能で状況や標的に合わせて直接射撃、エアバースト攻撃が可能。また、バックブラストを抑えており、屋内といった、ある程度の密閉空間でも使用できるのも特徴だ。重量はランチャーシステムが12kg、ミサイルが7kgと一人でも携行、運用ができる。Enforcerはワンショットの使い捨てになる。
Enforcerはスペイン軍も採用を決めており、今後、ヨーロッパ各国で採用が広がるかもしれない。
Source
https://www.mbda-systems.com/polska/innovation/preparing-future-products-3/enforcer/