世界最強の戦闘機と言われるF-22RapterとF-35LightningⅡ。どちらもアメリカの最新鋭ステルス戦闘機になり、F-35は日本の航空自衛隊にも配備され、空母艦載機としての運用も決定されている。F-22の運用はアメリカのみになり、輸出はしていない。どちらも最強の戦闘機といわれているが、どちらが最強なのかいろいろ比較してみた。
製造メーカー
F-22とF-35、実はこの両機はどちらもアメリカの航空宇宙メーカー「ロッキード・マーティン」が開発製造を主導している。つまり、メーカーによる技術・品質的差異は無いといってもよい。F-22の初飛行は1990年、F-35は2000年になり、F-35の方が最新だ。
製造コスト
F-22:3億3,900万ドル(368億円)
F-35:9,100万ドル(100億円)
F-35も十分高価なはずなのにF-22と比べると格安と思ってしまうほどの価格差だ。当初、アメリカ空軍はF-22を700機を発注したが、あまりに高額であったため、実際の生産数は200機に留まっており、既に生産ラインは閉鎖されている。実はF-22の実際の単価は1億5千万ドルなのだが、研究費も含むと上記の金額に膨れ上がる。研究費を回収しようと思うと数多く生産して海外に輸出する必要があるのだが、軍事技術機密情報が盛りだくさんのF-22は情報漏洩を防ぐために議会で輸出が禁じられた。ではF-35は?というと日本やイギリス、カナダなど同盟国が多数開発に参加しており、当初から輸出を前提としていた。その生産数は既に4000機を超える予定になっており、そのため、1機当たりの価格が安くなっている。
アビオニクス(電子機器・防衛能力)
F-22
F-22にはグラマン社製のアクティブ・フェイズドアレイ型特殊設計AN/APG-77レーダーが装備されている。このレーダーは逆探知を避け、F-22の位置を特定されることなく敵の位置を特定して攻撃することができる。AN/APG-77は、2,000個の送受信モジュールからなり250㎞先まで探知でき、探知した目標の種類を特定して、その情報を三次元で画像化することが可能だ。また、安全なリンクを介してデータ情報を通信し、敵の電子システムを妨害する対電子妨害能力を有する。空対空防衛システムは熱探知ミサイルがF-22ラプターをロックオンすると、フレアを放出して熱探知機を誤った方向に向け、レーダー誘導ミサイルにロックされると、チャフが放出され、レーダー波を妨げる。
F-35
F-35には同じくグラマン社の最新のアビオニクスシステムであるAN / APG-81が装備されている。81モデルは、AN / APG-71と同じステルス、空対空防衛が備わっている。1000個の送信モジュールを持ち150㎞先まで探知可能。対地レーダーのEOTSは赤外線、光学線センサーを用いて地上を高解像度でマッピングする。カスタム設計のAN / ASQ- 239バラクーダ電子戦システムはヘッドディスプレイシステムを使って360°の状況を認識することができる。
武器・武装
F-22とF-35はそもそも設計思想が異なる。F-22は空対空戦闘用に作られ、鷹や鷲といった空のラプター(捕食者)であり、それにあった空対空武装が基本。F-35はマルチロール(多用途)戦闘機、F-22に足りない部分を補うために開発され、空対地能力が向上しており、正に空から地上に降り注ぐライトニング(稲妻)だ。また、どちらもステルス性を考慮して武器は機体内のウェポンベイに内蔵され、戦闘時に機外に登場する。その分、武器の搭載量を犠牲にしている。逆にステルス性を犠牲にすれば機外に武器を搭載することが可能だ。第5世代機同士のドッグファイトになった場合、レーダー誘導によるミサイルは意味をなさず、赤外線捜索追尾システムがカギになる。しかし、F-22には搭載されておらず、第5世代機同士のドッグファイトになった場合、F-22は不利とされている。
F-22
機関砲:M61A2
短距離空対空ミサイル:AIM-9M/X(サイドワインダー)※LAU-141/A
中距離空対空ミサイル :AIM-120A/B/C(アムラーム)※LAU-142/A
対地誘導弾:GBU-32 JDAM
短距離ミサイル×2と中距離ミサイル×6の計8発というのが基本構成。
F-35
空対地能力を有するF-35はF-22と比べてウェポンベイ含め収容能力が上がっており、より重くて大きいミサイル、爆弾の搭載が可能になっている。ウェポンベイには最大2.5t、機外を含めると10tの武器が搭載可能だ。
機関砲:GAU-22/A 25mm
短距離空対空ミサイル:AIM-9M/X(サイドワインダー)※LAU-141/A
中距離空対空ミサイル :AIM-120A/B/C(アムラーム)※LAU-142/A
対地誘導弾:GBU-31 JDAM
ウェポンベイに搭載する場合、対空装備の場合は中距離ミサイル×4発。対地装備を含む場合は中距離ミサイル×2発と対誘導弾×2発。機外に搭載するビーストモードでは対空装備の場合は中距離ミサイル ×12発、短距離ミサイル×2発。対地装備を含む場合は短距離・中距離ミサイル各×2発、対地誘導弾×6発が搭載可能。対艦ミサイル、巡航ミサイルなど様々な武器に換装できる。
飛行能力
空対空のF22と空対地のF-35とではスピードにおいてF-22が勝っており、上昇速度もF-22が1分で65,000フィート上昇するのに対し、F-35は45,000フィートとF-35で追いつくことは到底できない。ドッグファイトのシミュレーションでもF-22が勝っている。
F-22 | F-35 | |
最大速度 | マッハ2.25 | マッハ1.6 |
航続距離 | 2,960㎞(2つの外部燃料タンクを装着した場合) | 2,200㎞(内部燃料のみ) |
限界高度 | 50,000ft(15㎞) | 50,000ft |
上昇速度 | 65,000ft/分 | 45,000ft/分 |
汎用性
F-22は空対空がメインの戦闘機、F-35はマルチロール機。戦闘機・攻撃機として空対空、地対空双方で一定の戦闘能力を発揮する。F-22はいわば局地戦闘機で、運用するには長い滑走路がいる。F-35にはいくつかタイプがあり、基本タイプのF-35Aは通常の滑走路を必要とするが、F-35BはSTOVLタイプ(短距離離陸・垂直着陸)で短い滑走路で離着陸ができるため、自衛隊初の空母艦載機と採用を予定している。そして、艦載機用のF-35Cは、アメリカ海軍空母での作戦能力有する機体だ。このようにF-35は場所を選ばず運用が可能で、汎用性が高い機体になっている。
まとめ
ドッグファイトの能力はF-22ラプターが勝っており、純粋な戦闘機としての格闘能力としてはF-22が上になる。しかし、現代の戦争において戦闘機同士の格闘戦はほとんどなく、アウトレンジからミサイル攻撃が主だ。F-22の方がレーダー探知距離は長く先制攻撃が可能だ。しかし、これはステルス機同士の戦闘の場合は意味をなさない。F-22は赤外線追尾もないためステルス機同士では戦闘力は低い。そして、何よりコストが高く、戦闘機としての汎用性、運用能力が乏しい。その点、場所を選ばず全世界に展開可能で1機で多くの役割をこなすマルチロール機のF-35ライトニングの方が総合的な戦闘能力は高いと言えるのではないだろうか。
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