ドイツ連邦空軍のユーロファイター・タイフーン戦闘機がドイツのバイエルン州インゴルシュタット・マンヒング空港に着陸中に無許可飛行していたドローンと衝突して損傷していた事が明らかになった。
事故は5月22日水曜日、ドイツ連邦空軍のユーロファイター・タイフーン戦闘機がマンヒング空港に着陸中に起きた。警察によると、事故は滑走路から東に約300m離れた無人地帯で発生した。着陸中、パイロットはドローンに衝突した事に気づかず、着陸後に機体を点検して初めて衝突した事を知った。ぶつかったドローンの詳細、機体の詳しい損傷内容は明らかにされていないが、パイロットが気づかなかった程なので、ドローンは小型なタイプと思われ、機体の損傷も深刻なものではなく、幸い飛行に支障をきたすものでは無かったと報道されている。
問題なのは衝突したドローンが無許可飛行していた違法ドローンであること。そして、22日に事故が起きながら、管轄するバイエルン州警察本部に報告されたのが5日後の27日月曜日だったことだ。空港周辺でのドローンの飛行は航空交通に危険をもたらすため禁止されている。これは日本を始め万国共通だ。許可の無いドローン、無人機の飛行は罰せられる。ドイツ警察は航空保安法違反や航空交通への危険妨害の疑いで捜査を開始した。
幸い、今回、ユーロファイターの損傷は軽微で済んだが、当たり所によっては大惨事につながっていたかもしれない。バードストライク同様、もしドローンが戦闘機のエアインテーク(空気取り入れ口)に吸い込まれると、ほぼ確実に重大な損傷が発生し、エンジンの故障、停電につながり、壊滅的な事態になる。更に今回は鳥とは違い、機械部品でできたドローンだ。キャノピーのフロントガラスに衝突すれば、ひび割れを起こす可能性があり、そうなれば、パイロットの視界が損なわれる可能性がある。キャノピーは鳥の衝突試験は行っているが、おそらくドローンでは行っていない。強固な翼、胴体といった部分も、ドローンに高速でぶつかった場合にどこまで耐えられるかは分からない。燃料タンク部分にぶつかり、燃料が漏れれば大惨事になる。ユーロファイターはステルス機ではないが、F-35やF-22といったステルス機なら、ステルスコーティングが剥げる可能性があり、高額な修理費用が掛かる。
今回、事故が起きたインゴルシュタット・マンヒング空港は民間も利用可能だが、一応、軍用飛行場だ。ドイツ連邦軍航空機技術耐空センターが置かれており、トルネード攻撃機やユーロファイターの試作機の初飛行はここで行われた。また、エアバス社のユーロファイターの製造拠点も置かれている。このような施設付近でドローン飛行が行われていたことも問題だ。日本でも先日、横須賀の海上自衛隊基地、米海軍基地で無許可飛行のドローンによって撮影された船舶映像が、中国の動画共有サイトに投稿されたで安全保障上の懸念を引き起こしたことは記憶に新しい。