ドイツの防衛企業ラインメタル社のアルミン・パペルガー最高経営責任者(CEO)がTSNのインタビューで語ったところによると、同社はウクライナに初の工場を開設し、リンクス歩兵戦闘車の生産を開始した。ロシアは、この工場を軍事目標と定め、破壊を狙っている。
ラインメタルはウクライナ国内で建設を進めていた最初の工場が操業を開始した事を発表、装甲車両と戦車の整備に特化した第二工場も間もなく建設に着手すると述べた。同社は昨年5月にウクライナの国営軍需企業ウクロボロンプロム社と戦車及び戦闘車両の生産及び、修理と整備のための合併会社を設立を発表。ラインメタル社が新会社の株式の過半数である51%を保有している。同社はウクライナの機械化戦闘能力を強化するため、年末までに第一工場で同社が開発したリンクス歩兵戦闘車を生産する予定だ。
リンクス歩兵戦闘車
Watch as #Rheinmetall’s #Lynx #IFV is engaging targets downrange with pin-point accuracy in an undisclosed location.
— Rheinmetall (@RheinmetallAG) July 20, 2023
Demonstrating its delay-free killer-killer capability, both #30mm Mk30-2 #machinecannon and Main Sensor Slaved Armament (MSSA) with a .50 heavy machine gun are… pic.twitter.com/rhSt6S3S0K
2018年に初めて公開されたLynx(リンクス)歩兵戦闘車は高い生存性、多様な環境への適応性を実現した次世代の歩兵戦闘になる。最大の特徴がモジュール式の設計になり、攻撃、防御両面で複数のパーツや武器が設置可能になっており、高度な柔軟性、多様性を実現。モジュールシステムは、共通の駆動モジュールと柔軟なミッションキットシステムを利用して、1つのプラットフォームでIFV(戦闘車両)、装甲兵員輸送車、指揮車両、回収車両、救急車、120mm砲を搭載した軽戦車など多種多様な車両を実現する。別の構成へのモジュール変更は、8時間以内で可能。ベース車両の共通性を活かしたこのシステムにより、車両のライフサイクル全体のコストを大幅に削減し、状況に応じた車両の変更、車両自体の改修を極力無くした形で新しい機能を手頃な価格でタイムリーに開発したりできるようになる。
リンクスには重量が最大38tの軽量モデル「KF31」、最大50tの大型の「KF41」がある。KF31は755馬力のエンジンを搭載し、最高速度は65kmに達する。KF41は1140 馬力のエンジンを搭載し、最高速度70km に達する。モジュール式装甲は500mの距離から25mm徹甲弾に耐えることができ、強化された車体設計は、最大10kgのTNTの爆発にも耐えることができる。アクティブ防御システム (APS) を追加するオプションもある。
工場は軍事目標
ロシア大統領報道官のドミトリー・ペスコフ氏はラインメタルのこの工場を正当な軍事目標であり、ウクライナにおけるドイツの軍産施設の設置はロシアの国家安全保障に対する脅威となると考えていたと強調している。戦時中、兵器工場が軍事目標になるのは常であり、ラインメタルもそれは承知でウクライナに建設はしているであろう。もちろん、工場の場所は明かされていないが、ドイツからの部品搬入を踏まえた立地、攻撃のリスクを避ける為、おそらくポーランド国境付近に工場はあると推察される。ロシアは既に場所を把握しているだろう。ロシアの軍事アナリストのイゴール・コロチェンコ氏は工場が本格稼働しだい、攻撃目標になるであろうと述べている。
ラインメタルはウクライナに計4つの工場の建設を予定。最初に稼働したリンクスの生産工場、現在、建設中の車両の整備に特化した第二工場。そして、第三、第四工場は砲弾と防空システムの製造工場とされる。ラインメタルは現在開発中の主力戦車KF-51パンターのウクライナの生産も計画しているとされる。ドイツ政府は軍が保有する攻撃兵器の供与を終了する方向であり、今後はラインメタルといったドイツ企業が新たに生産した兵器が供与される予定だ。