
北朝鮮は3月27日に新型の無人機と早期警戒管制機を公開した。無人機はアメリカのRQ-4Bグローバルホーク、早期警戒管制機はロシアのA-50と同じ外観をしており、どちらもコピー兵器と推察される。
米国のRQ-4Bグローバルホークのコピー

北朝鮮の国営メディアは金正恩総書記が、新型の長距離偵察攻撃無人機を自ら視察したと報じ、無人機の写真を公開した。無人機の名前は報じられなかったが、その外観と2023年7月に平壌で開かれた兵器装備博覧会と軍事パレードで発表された「セッピョル-4」とされる。

字型の尾翼と背部の空気取り入れ口に見られる特徴的な外観に見覚えある人も多いと思うが、これはアメリカの無人機RQ-4グローバルホークの空力設計を模倣している。いや、模倣というと忠実に再現、コピーしたといった方が正しいかもしれない。RQ-4 グローバルホーク(RQ-4 Global Hawk)はアメリカのノースロップ・グラマン社が製造する情報収集、警戒監視、偵察を任務とする高高度滞空型無人偵察機だ。米軍では監視プラットフォームの一部として2001年から運用されており、NASAやNATOにも導入されている。全長14.5m、翼幅は40mと翼幅は大型輸送機・旅客機と同等と無人機ながら非常に大きい。最大離陸重量は16トン以上、航続距離23,000 km、常用高度18,000 m。航続時間32時間と一回の飛行で約10万平方kmの範囲を偵察でき、これは韓国や北朝鮮の国土面積とほぼ同等だ。有人航空機では難しかった長時間・広範囲の偵察行動が可能になる。レーダー各種は合成開口レーダー、赤外線およびサーマルイメージング、電気光学イメージングに対応したセンサーを装備している。機体前方下部には巨大な望遠カメラレンズが搭載され高高度からターゲットの詳細な画像を撮ることができる。これが、米国製のグローバルホークの性能だが、北朝鮮の「セッピョル-4」の性能は全く不明だ。グローバルホークの開発情報を入手したのか、または単純に外観を真似ただけなのか。飛ぶ様子も確認されておらず、姿形はグローバルホークと瓜二つだが、性能は遠く及ばない可能性がある。
ロシアのA-50早期警戒機のコピー

北朝鮮は同国初と思われる早期警戒管制機(AWACS)も公開している。国営メディアは、視察する金正恩総書記の様子を公開。性能を推測されるような機密部分にモザイクこそ掛かっていたが、機内のコンソールレイアウトを明らかにしている。機体の名は明かされていないが、外観からロシアのA-50早期警戒管制機をベースにしている事が分かる。

A-50早期警戒管制機はIl-76大型輸送機を改造する形で1978年から1985年にかけてベリエフ設計局によって開発された大型早期警戒機。ソ連時代の1984年に就役し、現在、ロシア空軍が保有する唯一の早期警戒機になる。早期警戒管制機(AWACS)というように、同機は偵察と空中目標の検知、ミサイル攻撃のターゲットの検出、空中攻撃の早期警告などに使用される。大型レーダーを搭載し、弾道ミサイルで800km、爆撃機で650km、航空機であれば300km先まで探知追跡が可能だ。北朝鮮が早期警戒管制機を開発している疑いは2023年12月からあり、衛星画像でIl-76の機体上部にレーダードームのような円形の物体を追加する改修工事が行われていることが確認されていた。
性能不明なセッピョル-4無人機と比較し、この早期警戒管制機は本家のA-50に近い性能を持っていると推察される。AWACSは空中司令部と言われるように高度なAESAレーダー、データリンク、通信システムが必要であり、それらを北朝鮮が単独で開発できる技術は持っていない。しかし、ロシアが北朝鮮の軍事支援に対する見返りに技術協力を行っている可能性が非常に高いと思われる。
ただ、本家とは機能の相違はあるようで、例えば本家A-50が回転式レーダードームを採用しているのに対し、北朝鮮のは回転しない固定式だ。ロシアはA-50を中国やインドに輸出しているが、どちらも固定式レーダーになっており、搭載されているAESAレーダーはどちらもイスラエル製の回転を必要としない3面三角形状のレーダーになる。しかし、イスラエルが国連制裁により武器の輸出入が禁止されている北朝鮮にレーダーを販売する事は考えづらいので、レーダーもロシアの支援があったと考えられる。
北朝鮮には3機のIl-76輸送機があるとされので最大3機の早期警戒管制機の調達が可能になる。そうなれば北朝鮮の防空網は大幅に強化されることになる。