米軍が開発する地上移動式原子力発電基プロジェクト・ペレ

米軍が開発する地上移動式原子力発電機
Photo Department of Defense

一昔前まで戦争を行う上で最も重要な物資は”石油”でした。石油が無ければ、戦車も戦闘機も軍艦も動かすことはできません。しかし、情報機器、電子装備が増えた現代で最も重要な物は”電力”かもしれません。米軍は将来、戦地の前哨基地に電力を供給するための手段として、発電量1〜5メガワットの移動式原子炉・原子力発電機Project Pele(プロジェクト・ペレ)を計画しています。このアイディアは2019年に発案され、2021年5月28日に発表された米国防総省の2022会計年度の予算案に6,000万ドルの開発予算が盛り込まれました。国防総省はプロトタイプ設計を来年度中に開始したいと考えています。

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前哨基地用原子炉発電機

移動式の原子炉は米軍の原子力潜水艦、原子力空母の動力源として既に海軍では実用化されています。ニミッツ級空母には発電量550メガワットの原子炉二基を搭載。核燃料の交換は50年に一度になり、半世紀に渡ってエネルギーを供給。化石燃料を使用し、都度、補給が必要な一般的な艦船とは異なり、原子力艦は燃料の補給を必要としません。地上移動式の原子炉はこれよりも小型化され、トラックで運搬可能な大きさになります。主に送電設備がなく、電力供給が心許ない戦地の前哨基地などに配備されます。配備されれば従来の発電基、発電燃料の補給も必要が無くなり、長期間に渡って電力を供給し続けます。まずは3年間のピーク電力を供給できる原子炉の開発を検討しています。

敵の標的になるのではないか

ここで、一つ大きな懸念として、前哨基地に原子炉を置けば、敵の格好の標的になってしまわないかという点です。もし、攻撃を受け、原子炉が破損すれば、最悪、燃料溶融、メルトダウンが起きます。そうなれば、放射性物質が大気中に放出され、兵士はもちろん、周辺地域が核に汚染され、人が住めない地域になってしまいます。原子炉は基地にとっては最重要施設であり、地下に配置し、周辺は強固な陣地で固めるなど対策を行いますが、例えどんなに守りを強固にしようと万が一はありえます。ドローン技術が発展した今では、テロリストであっても精密誘導兵器による攻撃が可能です。そんな大きなリスクをどうやって防ぐのでしょう。

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TORISO燃料を使用する

メルトダウンのリスクを最小限に抑える方法として、この移動式原子炉にTORISO(トリソ)燃料が用いられます。これは新型の核燃料で、高濃縮ウランを低濃縮ウラン化して、小さなビーズ状・粒上にしたもので、これにより小型化を実現しています。そして、安全性においてもこれまでの核燃料とは異なり、原子炉に入れるとこのウランの粒は炭素とケイ素によって三層にコーティングされ、トリソ燃料粒子というものに生成されます。仮にウランの粒子が溶融しても、このコーティングが放射性物質の放出をブロックして、メルトダウンを防ぎます。とは言え、これはまだ新しい技術であり、完全に放射能物質の放出を防ぐわけではありません。もし、粒子が外に漏れれば汚染のリスクはあります。実現する上では完全に環境に配慮する必要があります。

前哨基地で使用するにはリスクはありますが、僻地や離島の基地の発電基としては、今後、大きな期待はもてるかもしれません。

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Source
https://www.defensenews.com/opinion/commentary/2021/06/15/military-micro-reactors-waging-yesterdays-wars-while-losing-the-futures/

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