いつからか、突然の豪雨をゲリラ豪雨と呼ぶようになった日本。このような雨を昔は夕立と呼んでいたと思うし、突発的な集中豪雨が多い東南アジアではこれをスコール (squall)と呼ぶ。そもそもゲリラ豪雨とは物騒な名前なのだが、ゲリラの意味をきちんとみんな理解しているのだろうか?
ゲリラ豪雨と呼び方が広まったの2006年頃かららしい。発端はマスコミで、読者、視聴者にインパクトを与えるためにゲリラ豪雨と名前を付けた。ゲリラなんてワードはミリタリー好きでないと分からない単語だ、ゲリラなんてワードを付けようと思った人はよっぽどのミリタリー好きだったのではないだろうか。ただ、”ゲリラ”ってワードは意味が分からなくても”ゴリラ”っぽくて、意味が分からなくてもニュアンスだけで強そうでインパクトが残るのでネーミングとしては正解だった。2008年には流行語大賞になって、世間一般で広く使われるようになった。今でも使われ続けており、流行語ではなく常用語となっている。
ゲリラの意味は
ゲリラ豪雨の意味をきちんと理解する上で”ゲリラ”の言葉の意味をここで改めて説明したいと思う。”ゲリラ”という単語の語源はスペイン語の「小さな戦争」を意味する”Guerrilla”からきている。戦争という国対国による軍隊同士の大規模な戦いをイメージすると思うが、ゲリラはもっと小さな組織、市民からなる武装組織の民兵などを相手にする戦いを意味し、今では、軍隊に満たない小規模な武装組織をゲリラと呼ぶ。そして、彼らが使う戦術をゲリラ戦(Guerrilla warfare)と呼ぶ。
ゲリラ豪雨は戦術からきている
ゲリラは主に国や正規軍といった大規模な軍事組織相手に戦う。軍隊は戦闘機や戦車、圧倒的な火力をもっている一方、ゲリラの武器は大抵、銃といった小火器のみ。正面から戦いを挑んではゲリラは負ける。そこで、彼らは目立たない小さなグループを作り、一般市民に紛れながら、敵の眼を掻い潜り、待ち伏せや奇襲をしかける。かつ少人数で機動性が高いため、ては直ぐに退散して街中に紛れてしまう。彼らは戦闘機や戦車を持っていないため、レーダーで探知することはほぼできない。その上、小さなグループで行動するから目視で見つけることも難しい。また軍人と違い軍服は着ず、普段着を着ていることも多く、格好で見分けることもできない。その上、一般市民と区別ができない。
つまり、ゲリラは神出鬼没で、どこに現れるか分からず、攻撃の予測ができない。そして、いきなり現れては攻撃し、反撃すればすぐに退散する。正規軍にとっては非常にやっかいな相手なのだ。このゲリラ戦という戦術は劣勢に陥った正規軍も使用する。太平洋戦争で南西諸島で孤立した日本軍の生き残りは散発的なゲリラ戦を展開していたし、ベトナム戦争では武力で劣る北ベトナム軍が米軍相手にゲリラ戦を行い、最終的に勝利している。テロリストも一種のゲリラ組織であり、爆弾テロや無差別テロは予測が難しく、これらも一種のゲリラ戦だ。
天気で例えると
正規軍(気象庁)は大規模部隊(台風・秋雨前線)であればレーダー(気象レーダー)でだいぶ前から探知し、進路を予測し、味方部隊(天気予報)に伝えることができる。しかし、散り散りになった小さな部隊(雨雲)となると検知、予測するのが難しくなる。ただの市民(雲)だと思ったものが、いきなり銃をもってゲリラ(豪雨)に変わる。いきなり登場しては一気に猛攻撃(豪雨)を仕掛け、直ぐに退散して、次の襲撃地へ移動してしまう。
最近では予測の技術も上がり、発生の少し前にはゲリラ豪雨を予測できるようになった。近い将来は完全に予測が可能になるかもしれない。その時でもゲリラ豪雨と呼び続けるのだろうか。