台湾で全基退役したホークミサイルはウクライナに行くかもしれない

台湾で全基退役したホークミサイルはウクライナに行くかもしれない
軍事新聞通訊社

6月29日、台湾の中華民国空軍は台南で「鷹式飛彈除役儀式(ホークミサイル退役式)」を開催し、半世紀以上に渡って台湾及び台湾海峡の防空を担ったホーク防空ミサイルの貢献を称えた。台湾で役目を終えたホークミサイルだが、今後、ウクライナに渡って任務を続ける可能性がある。

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ホークミサイルとは

“Homing All the Way Killer”こと「MIM-23 Hawk」はアメリカのレイセオン社によって1950年代に開発された地対空ミサイル。1959年にアメリカ陸軍、1960年にアメリカ海兵隊に導入が始まった。ミサイルシステムは指揮車両、捜索レーダー、指向レーダー、ミサイル発射機、動力システムに別れ、これらすべて車輪付きトレーラーに搭載され、牽引で移動が可能だ。発射機にはミサイル3発が搭載できる。ミサイルはマッハ2.4で飛行し、最低迎撃高度は60m、最高迎撃高度2万m、射程は最大40kmで分類的には中距離中低高度向けの防空ミサイルシステムになる。第一世代ではセミアクティブレーダー誘導方式を採用しており、索敵レーダーが目標を発見した後、指揮者に情報を提供し、ミサイルを発射、その後は捕捉レーダーが標的を追跡する。

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ホークミサイルが初めて実戦投入されたのは1967年、第3次中東戦争でエジプトに勝利したイスラエルはシナイ半島全域を占領。同半島にイーグル・ミサイルを配備、防空網を強化すると半島に侵入してくるエジプト軍機を次々と撃破した。1969年3月21日に、エジプト空軍のMiG-21戦闘機の撃墜を皮切りに、数日間で1機のIl-28、4機のSu-7、4機のMiG-17、3機のMiG-21を含むエジプト軍用機12機を撃墜した 。イラン・イラク戦争では、少なくとも40機のイラク軍機がイランのホークミサイルによって撃墜されている。既に半世紀以上経つシステムだが、レーダーとシーカーの改良を繰り返し、巡航ミサイルを撃墜できる能力も持っている。陸上自衛隊でも1964年から配備されており、国内メーカーが生産及び改良を行い、1991年までに4度の改良を実施、今なお現役で運用されている。

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台湾で退役したホークミサイルはウクライナへ

台湾には1960年に導入され、延べ、63年間に渡って台湾の空を護ってきた。台湾での実戦経験はないが、1965年から2017年までに行われた計41回の戦闘訓練で324機の訓練標的に対し、293機の迎撃に成功、90.4%という高い撃墜率を誇っていた。しかし、1994年に米陸軍、2002年に米海兵隊から退役すると、部品の調達など運用面に課題が出てきたため2015年から段階的に退役を開始。更に台湾侵攻の脅威が高まる中、防空能力の強化、近代化を急ピッチで進める必要に迫られ、今回、全基退役となった。今後はアメリカのPAC-2/3 パトリオットや国産の天弓2型と天弓3型が防空を担うことになる。ちなみに台湾の防空ミサイル密度は世界2位になる。

ただ、ここで課題になったのがシステムと数百発あるホークミサイルの処分だ。台湾のホークミサイルは状態が良く、1980年代に開発された第3世代と現代も通用するレベルにある。それに目を付けたのがアメリカで、お役御免となったこれらホークミサイルを買い取り、ウクライナに送るといったものだ。ウクライナには昨年スペインから第3世代のホークミサイル6セットが提供されており、既に運用は始まっている。また、スウェーデンやルーマニアといった近隣諸国でも同ミサイルは現役であり、ドイツやフランス、イタリアも過去に運用経験があり、アメリカもサポートを表明。6月に発表した新たなウクライナへの軍事援助でホークミサイルの提供も発表している。これは米軍で退役したものとされているが、台湾メディアによれば米国はこれとは別に処分に困った台湾のホークミサイルの買い取りを打診、交渉が行われているとされる。米国のとは違い、直近まで運用されていたので状態は良く、直ぐにでも使用できる。台湾のまとまった数のホークミサイルが提供できれば、ウクライナの防空網はかなり強化できることになる。

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Source

Taiwan’s Retired Hawk SAMs Headed To Ukraine: Report | The Drive

台美重大「另類軍援」合作! 我除役百枚鷹式飛彈防禦烏克蘭領空 – 政治 – 中時新聞網 (chinatimes.com)

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