軍用車のハンヴィー、商用車のハマー。この2つの車は似たような形をして混同する人も多いはず。それもそのはず、この二台は実は同じ車なのだ。同型のアサルトライフルながら一般向けがAR-15、米軍内ではM16と名称異なるように商用車と軍用向けとでは呼び名が異なるのだ。今回はこのハンヴィーとハマーの成り立ち、違いについて解説したいと思う。
ハンヴィーとは
ハンヴィーは英語で書くと”HMMWV”となる。これは高機動多用途装輪車両を意味する「High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle」の略語になる。ジープ(Jeep)と呼ばれたM151(写真下)に代わる次期軍用車両として1970年代から開発が始まり、ランボルギーニやクライスラーが参加する中、最終的にAM(アメリカン・モーターズ)ゼネラルの設計案が採用されることになる。車名はプロジェクト名であった”HMMWV”がそのまま使われることになった。1985年より量産が開始され、1989年のパナマ侵攻で戦場デビューし、1991年の湾岸戦争で一躍有名になった。
ハンヴィーはそれまでのM151と比べ、車体は広く、長くなった。フロントガラスは二つに分割され、強度を上げた。総重量は約2500㎏になり、最大積載量は1200㎏になる。エンジンはV8ディーゼルエンジン (6.2リットル) またはV8ガソリンエンジン (6.3リットル) を搭載でき、両方とも3速オートマチックになっている。標準的な武装はキャビン上部へのM2機関銃の搭載だが、対戦車ミサイルも搭載できる。任務など応じて装甲版も追加できる。その他、様々なタイプのハンヴィーが開発されている。
アカデミー 1/35 M1151 ハンヴィー AM13415 プラモデル
軍用車から商用車に
1991年の湾岸戦争のニュースで度々映し出せるハンヴィーの無骨さと戦場での雄姿は男たちの心を魅了した。一般人の間でハンヴィーを購入したいという声が上がったが、ハンヴィーはあくまで軍用で民間用に作られておらず、乗用車としての快適性は持っていなかった。しかし、映画『ターミネーター2』で一躍ハリウッドのトップスターに上り詰めたアーノルド・シュワルツェネッガーが欲しがったことから話は変わる。彼は映画のセットでみたハンヴィーをえらく気に入り、AMゼネラルに商用モデルを製造するよう説得。そして、1992年にハンヴィーの商用モデルであるハマー(HUMMER)が誕生する。ハマーという車名はもともとAMゼネラルがハンヴィーに名付けようとしていた名前だ。記念すべき1代目はもちろんシュワルツェネッガーが受け取った。軍仕様のハンヴィーとは異なり、ハマーは光沢のあるボディ仕上げで塗装され、エアコン、防音、室内装飾、スピーカーといった乗用車向けの改装が施されていた。
ハマーは生産停止に
その後、1999年にAMゼネラルはゼネラルモーターズ(GM)傘下になり、2002年にはSUVモデルのハマーH2が登場し、人気を博すが、このころより、雲行きは怪しくなる。原油高に世界的に排出ガスの規制が叫ばれる中、リッター4㎞の燃費の悪さは、環境意識が高いセレブから敬遠される。2005年に小型化し、燃費を改善させたハマーH3を販売するが、それでもハマーの復活には繋がらなかった。2009年にはリーマンショックの影響もありGMは破産し、ハマーブランドは売りに出させる。一時、中国の四川騰中重工機械有限会社が買収するという話が持ち上がったが破談になった。2010年にハマーは生産停止になり、長らく生産されていない。実際、以前は都内でよく見かけたハマーだが、最近は見かけることはほぼない。
軍用のハンヴィーはAMゼネラルで引き続き生産されており、ハマーとは異なるハンヴィーの商用版が開発されるという噂があるが、真偽のほどは不明だ。