ウクライナ軍の防空部隊がミサイルや対空砲といった対空兵器を使用せずに、ロシア空軍の戦闘機を無傷の状態で撃墜していたことが分かりました。いったいどうやったのでしょう。
ウクライナ国防省の情報機関ArmyInformの発表によるとウクライナ軍のヤロスラフ少佐はミサイルを発射することなくロシアの戦闘機を撃退させたとウクライナ空軍の記念式典で述べました。
ヤロスラフ少佐はウクライナの最高の栄誉「ゴールドスター」を受賞した英雄です。少佐は9K37 Buk(ブーク) M1 対空ミサイル部隊を率いる司令官で2月のロシアによる侵攻時、南部へルソンのノヴァヤ・カホフカ地域で戦闘任務に従事し、ロシア軍のMi-17ヘリを撃墜。その後、ヨーロッパ最大の原子炉があるザポリージャに移動し3月中旬まで戦闘を行います。その後、ロシア空軍の活動が活発だったハリキウ地域に転戦し、防空任務にあたります。これまで約半年間の戦闘で同部隊はロシア軍の戦闘機11機、ヘリコプター2機、巡航ミサイル2発、ドローン13機を含む28機の標的を撃墜してきました。
ミサイルを使わずに敵を追い払う
ロシア国境に近い第二の都市ハリキウはロシア軍が北部地域を撤退した4月初旬までもっともロシア空軍の活動が活発な地域で、同部隊は時に同時に10機のロシア軍機を相手にすることもありました。彼らの部隊だけで全てを撃退することは不可能でしたが、必ずしもミサイルを発射して撃退する必要はありませんでした。飛来するロシア軍機に対空レーダーを照射した場合、ロシア軍機は地上目標の爆撃よりも、防空施設への攻撃、回避行動を優先します。敵を引きつけ、爆撃をキャンセルさせることで、空からの攻撃に脆弱な砲兵や歩兵といった地上部隊を退避させる時間を稼ぐことができます。しかし、ロシア軍機も対レーダーミサイルを搭載しているので、部隊は直ぐにレーダー照射をやめ、移動、敵の攻撃を回避しなくてはなりません。彼らは移動を繰り返しながら、レーダー照射を行いました。軍用機には通常”レーダー警報受信機”が搭載されており、対空レーダーから発せられる電波を検知し、機体がレーダー探知、ロックオンされた時、パイロットに警告音を鳴らし、危険を知らせるわけですが、この恐怖心を与えるだけでも十分で、パイロットは危険を感じ、同空域から退避します。そして、中には非常に憶病なパイロットもいたようで、ロックオンされた時点でミサイルも発射していないのに、機体を捨て脱出したものいたそうで、少佐はミサイルを使わずの無傷のままの戦闘機を撃墜させることに成功したと述べています。
9K37 ブークとは
9K37 Bukはソ連時代の1970年代に開発され、1980年にソ連軍で運用が始まった自走式の中・低高度防空ミサイルシステムで、9K37 Buk M1 はその改良型になります。ウクライナ軍は2016年時点で72セットを所有していたとされています。ユニットは指揮車、レーダー、発射システム、ローダーの4車種から編成されます。レーダーの探知距離は最大120km、低高度の場合は45kmになります。ミサイルの有効射程は最短30mからミサイルによりますが最大14~32km、高度は22,000mです。レーダーは同時に18個の標的を追跡でき、同時に6個の標的を攻撃可能ですが、発射システム1両に搭載できるミサイルの最大数は4発になります。航空機への命中率は70~90%、巡航ミサイルで60~80%、ヘリコプターで70~80%になります。ウクライナ軍が使用したミサイルの中には40年前に製造されたものもありましたが、標的を撃墜しています。
Source
https://armyinform.com.ua/2022/09/03/zbyly-vorozhyj-litak-ne-vypustyvshy-zhodnoyi-rakety/