アフガニスタン・カブール国際空港で米海兵隊13人を含む60人が死亡する自爆テロを首謀した「イスラム国ホラサン(Islamic State Khorasan Province)」。この事件で一躍、その名を知らしめた同組織とは?
イスラム国(ISIL)を継ぐ組織
イスラム国ホラサン(ISIS-KまたはISKP)とはその名の通り、かつて一大勢力を誇ったイスラム国(ISIL)の支部・下部組織の一つで2015年に創設された比較的新しいイスラム過激派組織。本体のISILが弱体化した今、最も過激で暴力的な武装組織と言われている。アフガニスタン東部パキスタンとの国境ナンガルハール州に拠点を構えている。
かれらの目的はかつてホラーサーンと呼ばれていたパキスタン、アフガニスタン、イラン東部、中央アジアの一帯にイスラム・カリフ制を布く国家を建立すること。そのためにジハードと称してテロ行為を行い、これまで約100個の民間人を攻撃、米国、アフガニスタン、またはパキスタンの治安部隊に対して250の攻撃を実行している。2017年3月にはカブールの病院を襲撃し、医師、看護師、患者50人を殺害。ほどなくして女学校も襲撃し、何十人もの女学生を殺害した。今年5月には首都カブール西部にある公立の女子校近くで爆弾テロを起こし、60人以上がなくなった。事件発生時は攻勢を強めるタリバンの犯行も疑われたが、今となってはISKPの犯行を疑いようもない。
タリバンとは対立
ISKPが目指すカリフ制とは預言者ムハンマドの後継、代理を意味する「カリフ」を指導者・最高権威者とし、イスラム教の原理原則、イスラム法にのっとって運営される国家のこと。イスラム原理主義、敬虔なイスラム教徒にとっては理想の国家になる。1923年までオスマン帝国がカリフ制を布いていたが、共和制のトルコに移ったことでカリフ制は廃止。以後、カリフ制を布く国は表れていない。イスラム法の下の国家という点ではタリバンと同様であり、タリバンが目指すものもカリフ制だ。その点で、2つの組織の目的は一致しているように見えるが、ISKPはタリバンの目指す国家に同調はしていなく対立している。ISKPはタリバンよりもイスラム原理主義思想が強く、いわゆる”超過激派”で、タリバンは”過激派”だ。タリバンは前政権時と比べ、多少の融和政策を打ち出しているのもISKPにとっては気に食わないようだ。 しかし、彼らは宗教的教義を必ずしも守らないことでも知られており、祈りの時間に攻撃することもある。
タリバンのおかげで勢力回復
国内の刑務所を次々と解放していくタリバン。こうやって戦力を強化し、協力者を得ていますpic.twitter.com/vT5n5NdEWc
— ミリレポ (@sabatech_pr) August 10, 2021
ISKPは一時期3000人の戦闘員を抱えていたが、アフガニスタン軍、米軍、タリバン、パキスタン軍と四方を敵に囲まれ弱体化していた。しかし、タリバンのアフガニスタン制圧に伴い、戦力を回復している。まず、タリバン内にも超過激派思想の者は何人かいて、タリバンの融和政策に反対してISKPに合流するものがいる。そして、最も大きな要因は別にある。タリバンはアフガニスタンを制圧していく中で、各地の刑務所を開放し、囚人を釈放した。全土制圧時も恩赦として全土の囚人を釈放している。これには捕らわれた仲間を釈放させるのと、囚人をタリバン側に取り込むという目的もあり、これが功を奏し、タリバンは戦力を拡大し、協力者を得た。しかし、それと一緒に数千人のISKPメンバーも釈放されており、これがISKPを活性化させ、今回のテロにつながった要因の一つかもしれない。
Source
https://www.dailymail.co.uk/news/article-9927167/Afghanistans-chilling-new-face-terror-ISIS-K-Taliban-far-liberal.html
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58352178