先週、世界の戦闘機市場は目まぐるしく動きました。少なくとも三か国で大きなディールが決定。しかも、これら三か国は同地域にあります。
イスラエル
パレスチナ・ガザでハマスとの戦闘が続いてるイスラエル。脅威はそれだけではなく、ハマスに呼応するイエメンのフーシ派、レバノンのヒズボラとの小競り合いも続いており、全面衝突の脅威が迫っているとされます。そして、それらを支援するイランも着々と軍備増強を進めています。26日の海外メディアの報道によれば、これらの脅威に対抗するためイスラエルはF-35戦闘機とF-15EX戦闘機をそれぞれ25機、計50機を追加購入するほか、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプター12機と大量の弾薬も購入する予定です。イスラエル国防省のエヤル・ザミル長官らは25日木曜に訪米を終えましたが、その間、国防総省や国務省の米政府高官、米軍需大手ロッキード・マーチン社とボーイング社の代表者と会談、25日に協定が結ばれたと報道されています。イスラエル空軍は昨年7月に25機の追加発注を行い、75機のF-35をオーダーしていましたが、今回の25機の追加で計100機となります。また、F-15EXについてはイスラエル空軍が保有する25機のF-15Iをアップグレードする形になります。F-15EXは現在、米空軍にしか配備されておらず、完全量産化はこれからです。先にインドネシアが購入に同意していますが、イスラエルは自国の状況を顧みて優先権を訴えています。
トルコ
アメリカのバイデン大統領は26日、トルコのエルドアン大統領が25日にスウェーデンの北大西洋条約機構（NATO）加盟を承認する文書にようやく署名したことを受け、トルコにF-16戦闘機を売却することを正式に認めました。トルコはF-35共同開発プロジェクトの一国で100機のF-35を購入する予定でしたが、NATO加盟国でありながらアメリカの反対を押し切ってNATOの仮想敵国ロシアからS-400防空ミサイルシステムを購入。これに激怒したアメリカはF-35プロジェクトからトルコを外し、トルコはF-35を購入できなくなります。トルコは旧式化したF-16をF-35に置き換える予定であったため、その目論見が外れます。そこでトルコはF-16の最新バージョンの購入とアップグレードを求めます。このままではトルコがNATOから離れる懸念もあったため、バイデン大統領は容認していましたが、トルコがスウェーデンのNATO加盟を認めないなど、NATOと一線を画す状況であったため、正式承認とは至りませんでした。しかし、今回、トルコが承認したことでバイデン大統領も正式に総額230億ドル規模のF-16の売却を認めます。トルコはこれにより新たに40機のF-16 Block70を取得し、既存の保有機のうち79機をアップグレードします。
ギリシャ
トルコのF-16の売却と合わせて決まったのが隣国ギリシャへのF-35の売却です。ロイター通信の報道によれば、これは米政府がトルコとギリシャの間の長年にわたる緊張のバランスをとるためとされており、アメリカは86億ドルで40機のF-35の売却に同意しました。トルコとギリシャ、両国は、過去、幾度となく戦争を繰り返してきた歴史があります。ギリシャは、もともとトルコの前身であるオスマン帝国から、独立戦争を経て1832年に分離独立しました。その後も地中海のキプロス島のギリシャ系住民とトルコ系住民の民族問題を背景に両軍が介入。キプロス紛争は未だ終結していません。そういった背景もあり、両国は犬猿の仲と言われています。それもあり、F-16の売却により地域の戦力バランスが崩れる事を複数の議員が懸念、トルコに圧力をかけるためギリシャにF-35の納入に同意したとされています。2027年から2028年にかけてギリシャに納入される予定で周辺国ではイスラエルに次ぐ二か国目の運用国になる予定です。F-35開発プロジェクトの参加国でありながら、ライバルであるギリシャに先を越されたトルコは屈辱かもしれません。昨年12月にエルドアン大統領が6年ぶりにギリシャを訪問するなど関係が改善しているところでした。
Source
https://www.theguardian.com/world/2024/jan/27/us-approves-23bn-sale-of-f-16-war-planes-to-turkey
