ウクライナ軍、いや、ウクライナ国民が健闘している。圧倒的な戦力差で2日でキエフは陥落すると言われていたが、キエフに迫ったところでロシア軍の侵攻は停滞。長期戦の様相も見せている。それもあってか、各国は更なる軍事支援を表明。これまで兵器提供に慎重だったドイツも武器の提供を決め、オランダ、チェコ、ポルトガルも兵器の提供を決定。アメリカも追加支援を行う。
支援の多くは携行式兵器
Talk of the Ukrainian morale pic.twitter.com/U1v7ZDK1cM
— Illia Ponomarenko (@IAPonomarenko) February 26, 2022
これらの兵器支援で目立つのが携行式兵器という点。携行式兵器とは兵士が一人で持ち運び、照準から発射まで運用できる兵器で、戦車やヘリ、航空機を破壊できる威力を持っている。ドイツは新たに携行式対戦車ロケット「パンツァーファウスト3」1000基と携行式対空ミサイル「スティンガー」を500基。オランダもパンツァーファウスト3を400基、スティンガーを200基提供する。アメリカも追加の携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」を追加提供する。ロシアの侵攻前にはイギリスは対戦車誘導ミサイル「NLAW」、バルト三国はスティンガー、ポーランドからは携行式対空ミサイル「Grom」など多くの兵器を提供されていた。
訓練がさほど必要なく扱える
「そんな兵器ではなくて戦車や戦闘機を提供しろ!」と思う人もいるかもしれないが、戦車や戦闘機は渡されても直ぐに扱えるものではなく、通常数か月以上の訓練が必要になる。また種類やタイプが違えば、もともとの戦車乗りやパイロットであっても一定期間の訓練は必要だ。メンテナンスも必要であり、戦時中で自国が戦場となった今、そんな余裕はない。その点、携行式兵器は1日で扱い方は学べ、ミサイルには誘導装置が付いているのでロックオンして発射すればあとは自動で追跡してくれる。ロケットも照準を定めて撃つだけ。渡されて直ぐに戦車や戦闘車が持つ砲の火力を手にすることができる。戦車などに比べ安価で数を揃えられ、輸送も用意で各国も支援を行いやすい。
ウクライナがロシアに勝るのはマンパワーだ。ウクライナ軍の兵力は約50万人だったが国家総動員令を発令、18~60歳の全ての男性が対象になったことで、単純兵力は約1500万人になった。もちろん全員が戦闘に参加するわけではないが、多くが武器を手に取り抵抗している。ウクライナに展開している兵力は19万人で単純なマンパワーであればロシア軍を大きく上回ることになる。しかし、ロシア軍は世界最強の地上軍を持っており、数万両の強力な戦闘車両を持っている。いくら兵がいても銃では進軍してくるロシア軍の車両を破壊することはできない。そこでこの携行式兵器が重要になる。携行式兵器であれば、正規軍ではない志願兵も使用できる。今のところ使用しているのは訓練を受けている正規軍や領土防衛軍などの準軍事組織のみのようだが、万が一の時に志願兵も使って応戦できる。
見つかりにくい
携行式兵器は小型で人間が持ち運べる分、レーダーに検知されることもなく、携行しながら市街地や森林で身を隠すことも用意だ。逆に戦車といった車両は車体が大きいの発見されやすく、直ぐに軍事標的として識別できてしまう。戦力的に不利なウクライナは正面で火力でやり合うより、歩兵をベースにしたゲリラ戦を展開する方がよい。戦闘は市街地戦に移りつつあり、そこでの戦闘は小回りが利く、携行式兵器が役に立つ。その上、勝手知ったる土地で戦うウクライナ軍が有利だ。
危険は伴う
とはいえ、小型な分、射程は他の大型兵器に比べると短く、ロケット弾の場合、確実に当てるためには数百メートルまで近づく必要がある。戦車の主砲の射程はその数倍だ。先に見つかれば一方的にやられる。その上、戦車や装甲車と違い装甲で守られていない生身で戦う必要があり、反撃されればひとたまりもなく、攻撃は命懸けだ。
The emotion.
— Illia Ponomarenko (@IAPonomarenko) February 26, 2022
Reportedly, this shows 🇺🇦Ukrainian troops killing Russian tank convoys near Ivankov, close to the Chernobyl Zone. pic.twitter.com/356d0zKgJr
ロシアはソ連時代、アフガニスタンに侵攻してスティンガーやRPGの反撃に苦しめられた苦い過去がある。SNSには携行式兵器によって破壊されたロシア軍の車両やヘリや多数上がっており、被害は甚大だ。被害が増えればロシア国内の世論も黙っていないだろう。