バイクにもトラックにも見える「ケッテンクラート（Kettenkrad）」は第二次世界大戦時にナチス・ドイツ軍が開発した奇妙で珍しい全地形型の履帯バイクになる。
バイク？トラック？
ケッテンクラートは第二次世界大戦中に開発された乗物の中でも最もユニークな乗り物の一つになる。フロント部分はハンドルバーにヘッドライト、一つの車輪と、その見た目はバイクと同じなる。ケッテンクラートを多くの人がバイクと見なしていたが、他のバイクとは大きく異なる点がある。それは後部部分に履帯（キャタピラ）を持つトラックがついている点だ。日本ではいわゆる半装軌車（はんそうきしゃ）というものに分類される車両になる。半装軌車もなんぞや？という話だが、いわゆるハーフトラックだ。
ドイツ語での制式名称は「クライネス・ケッテンクラフトラート(Kleines Kettenkraftrad)」。英語にすると「Tracked motorcycle」になる。 Kleines Ketten ＝Trackedは「履帯」、 kraftrad = motorcycleになり、日本語に訳すと「履帯バイク」という意味になる。これからすると定義的にはバイクなのか？
イタレリ 1/9 WW.II ドイツ軍 ケッテンクラート プラモデル IT7404
どんな地形も走破
ケッテンクラートの製造はソ連侵攻が始まる1941年からになる。当初は空挺部隊用に作られ、航空輸送ができ、兵士と共にグライダーにて戦地に空中投下をしていた。後ろのトラック部分には兵士２人が搭乗可能になり、野砲の牽引、迫撃砲など小型火器の運搬に使われた。バイクハンドルを活かした直感的な操作に履帯を活かした小回りなど街中、森林地帯など狭い場所でも容易に走行できた。履帯を活かし、オフロードに急な丘や山を登ることができ、 他の車両には走行不可能な地形を横断することもできた。その汎用性と機動性から多くの戦場で重宝され、ソビエト連邦の雪上、北アフリカの砂漠、チュニジアの荒れ地、イタリアの山岳地帯、そして1944年6月のノルマンディー上陸以後はフランス、ドイツの市街地など、地形を選ばず、戦闘任務を果たした。
延べ8000台が生産されるも終戦後に残ったのは僅か数台だった。しかし、その実用性から終戦後も1948年まで生産され、ワイン生産者、農民、および西ドイツの森林当局によって使用された。
今でも動く状態で車両は残っており、クラシック車両としてオークションなどで取引されている。その価格は700万円～1000万円になる。
スペック
36馬力の排気量1,478 ccの4気筒水冷エンジンを搭載し、25度以上の傾斜を登ることができ、舗装された道路であれば最高時速70㎞/hをほこる。
全長：3000㎜
幅：1000㎜
高さ: 1200㎜
重量：1560㎏
ケッテンクラートが搭乗する作品
プライベート・ライアン
ケッテンクラートを有名にしたのが、ノルマンディー上陸を描いた戦争映画『プライバート・ライアン』だろう。作品の終盤、フランスのとある街でミラー大尉たち米軍は橋を守るためにドイツ軍と戦うのだが、そこにドイツ軍から鹵獲したケッテンクラートが登場する。ライベン一等兵がケッテンクラートの後ろに乗り、ドイツ軍をおびき寄せるために先制攻撃を仕掛けに行く。瓦礫ばかりの悪路を難なく走る姿が見れる。
少女終末旅行
『少女終末旅行』 は日本の漫画・アニメ作品。文明が崩壊した終末世界をチトとユーリの少女二人が旅をする物語になり、廃墟都市をケッテンクラートに乗って彷徨いながら都市の最上部を目指す。登場するケッテンクラートは古代文献から復元したという設定になり、物語でも重要な位置を占め、今作のアイコン的な存在だ。
タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ No.02 ドイツ陸軍 ケッテンクラート 牽引セット インファントリーカート・ゴリアテ付 プラモデル 32502
https://www.artcurial.com/en/lot-1942-nsu-hk-101-sdkfz-2-kettenkrad-no-reserve-3279-3
https://nationalinterest.org/blog/buzz/nazis-all-terrain-kettenkrad-vehicle-was-so-popular-allied-troops-were-soon-riding-them
