アメリカ海軍は8月27日、ジェラルド・R・フォード級航空母艦の三番艦であるUSS エンタープライズ (CVN-80)の起工式をバージニア州ニューポートにあるハンティントン・インガルス・インダストリーズ (HII)のニューズ造船所 (NNS)で行い、船の竜骨にあたるキールの取り付けを行いました。
ジェラルド・R・フォード級空母の三番艦
ジェラルド・R・フォード級航空母艦は米海軍の最新鋭原子力空母で世界最大の航空母艦です。退役したエンタープライズ空母と現在運用中のニミッツ級空母の後継として開発され、一番艦のジェラルド・R・フォードがエンタープライズに代わる空母として2017年に就役。二番艦のジョン・F・ケネディは2019年に進水し、ニミッツ級の一番艦ニミッツに代わり、2024年に就役予定です。今回起工した三番艦のエンタープライズは2025年の進水、2028年にニミッツ級二番艦ドワイト・D・アイゼンハワーに代わり、就役を予定しています。フォード級は全10隻の建造を予定しており、5隻目までが既に建造を決定しています。
9隻目のエンタープライズ
USS エンタープライズ (CVN-80)はエンタープライズと命名された9隻目の艦船になります。エンタープライズ (Enterprise)とは英語で「冒険」「事業」を意味し、初代のエンタープライズは1775年のアメリカ独立戦争まで遡り、イギリス軍の造船所から進水したばかりの軍艦「ジョージ」を鹵獲して改名した船が最初のエンタープライズになります。一代目は1777年に座礁し、鹵獲を防ぐため燃やされています。二代目エンタープライズも1776年に命名されており、同時期に同名の船二隻が運用されていました。もともと軍属ではなかった二代目は1777年にメリーランド州安全評議会に戻され、その役目を終えています。最初からエンタープライズとして運用されたのは1799年に就役した三代目からになります。エンタープライズという名を有名にしたのは7代目のUSS エンタープライズ (CV-6)です。ヨークタウン級空母の二番艦として、1938年に就役、ハワイの真珠湾を母港とし、1941年12月、真珠湾攻撃によって始まった太平洋戦争では開戦当初から参戦。ミッドウェー海戦、マリアナ沖海戦、レイテ沖海戦と主要な海戦にはほぼ参加し、艦船としては大戦中最多の勲章が授与されます。日本軍の大本営発表では9度、撃沈されていますが、終戦まで生き残り、1947年に退役しています。以後、7代目からはエンタープライズは空母の艦名となります。
8代目は1961年に就役したエンタープライズ級空母CVN-65になり、同艦は米海軍及び世界初の原子力空母として2012年に退役するまで、半世紀にわたり、米海軍の象徴として、君臨しました。そして、この2つの空母の系譜を継ぐのが今回、起工したUSS エンタープライズ (CVN-80)になります。起工式には7代目のUSS エンタープライズ (CV-6)に乗船していた99歳のBill Norberg(ビル・ノーバーグ)氏も出席しています。
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