
トランプ大統領は、ロシアおよび中国との核軍縮協議を再開したいと述べており、最終的には米中露3カ国の巨大すぎる防衛予算を半分に削減すること3か国間で合意できることを望んでいると述べている。大国の軍縮協議は歴史上何度か繰り返されてきたが、合意に達するのだろうか。
トランプ大統領は2月13日木曜、大統領執務室で記者団に対し、核抑止力の再構築に数千億ドルが投入されていることを嘆き、これを削減するため敵対国にも同様に支出削減の約束を取り付けたいと述べた。トランプ大統領は「我々が真新しい核兵器を製造する理由はない。我々はすでに多くの核兵器を持っている。世界を50回、100回以上破壊できる。そして我々は新たな核兵器を製造しており、敵対国もまた核兵器を製造している。我々は皆、もっと生産的なことに使えるはずの多額の資金を核兵器に費やしている」と述べ、中国とロシアの3カ国が核兵器備蓄を削減し、国防予算を半分に削減することについて協議するため、両国との会談を提案した。
プーチン大統領はトランプ氏の提案に同意
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこのトランプ大統領の提案を支持。「それは良い考えだと思う。米国が50%削減し、我々も50%削減し、中国も望むなら参加するだろう」とプーチン大統領は24日、テレビのインタビューで語っている。プーチン大統領は2023年2月に2010年にアメリカと締結した核弾頭を削減し、保有数に上限を設ける「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行を停止すると発表していた。ロシアの軍事予算はウクライナ侵攻の影響で年々増大しており、2024年にはGDPの約8.7%に達している。
中国は米国が先導して模範をと提言
トランプ大統領の提案について習近平国家主席は何もコメントは発していないが、この提案について質問された中国外務省は20日の定例記者会見で、米国が世界最大の軍事予算を持っている事を前提に「米国は”米国第一主義”を掲げているのだから、率先して軍事費削減の模範を示すべきだ」と述べ、まず先に米国が軍事予算を削減すべきと提言した。アメリカの2024年の軍事予算は年間8500億ドルと世界最大で世界中の軍事予算総額の4割近くを占める。それに対し、世界2位の軍事予算を持つ中国は2300億ドルとされ、3位のロシアが1400億ドルほどとされる。トランプ政権は国防総省と米軍に8500億ドルの8%、およそ500億ドルを削減するよう命じているが、それでも8000億ドル。仮に米国だけが軍事予算を半減したとしても4000億ドルと中露を遥かに上回るなど、米国が突出している形だ。
中国外務省報道官は「中国の限られた防衛費は、国家の主権、安全、発展の利益を守るために完全に必要であり、世界平和を守るためにも必要だ。中国は、核戦力を国家安全保障に必要な最低限のレベルに常に維持しており、いかなる国とも軍拡競争を行っていない」」と述べており、中国がトランプ大統領の提案に乗る可能性は現状低いと思われる。核兵器の保有数については米露がそれぞれ5000発以上の核兵器を保有しているなか、中国は500発ほどと10分の1になり、中国としては米露と同じ水準まで持っていきたいのが本音だろう。中国は近年、軍事力を大幅拡大、質はともかく、米国より安い労働力や人口を背景に量を揃え、海軍戦力は既に米海軍を上回っている。中国が削減しない限り、トランプ大統領が米国だけ半減させる事はなく、絵にかいた餅に終わる可能性は高い。
核戦力を近代化するアメリカ
そもそも米軍は現在、核戦力の更新、近代化を図っている。空軍は新しい大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発計画「センチネルICBM計画」を進めている。しかし、2020年に立てた1409億ドルの予算計画から81%超過する見通しだと発表。調達費だけで1410億ドルに上り、運用と維持にはさらに数千億ドルかかる。トランプ政権はこれを廃止したいと考えていると伝えられている。ただ、国防総省は他国が米国に核攻撃を仕掛けるのを阻止するためにはセンチネルが不可欠だと主張しており、開発を諦める気はない。米海軍は潜水艦発射弾道ミサイル「トライデントII」の寿命を2084年まで延長する事を決定し、改修する。また、F-35A戦闘機が2024年に戦術核爆弾「B61 mod12」を搭載することが正式に認定され、史上初の核搭載可能な第5世代戦闘機になるなど、核兵器の整備は進められている。