米国の航空機メーカー”ボーイング”社の主要部品サプライヤーであるGKNエアロスペースが米国内の工場の操業停止を計画しており、ボーイングが製造するF-15とF/A-18の両戦闘機の生産ラインがストップする可能性があると報じられている。
ボーイング社は同社が生産するF-15およびF/A-18両戦闘機に使用する重要部品の生産をGKNエアロスペースに委託しており、特に「スーパープラスチック」と「飛行制御面」の2つは両機を生産する上で必要不可欠な部品になる。ボーイング社は2001年以来、20年以上に渡って同社一社にこれらの部品を依存している。しかし、GKNは2024年末までにミズーリ州ヘーゼルウッドにある工場を閉鎖する予定で、これにより部品供給がストップしボーイングは両戦闘機の生産を継続できなくなる恐れがある。
現在、ボーイング社はF-15シリーズの最新版であるF-15EXイーグルIIを絶賛量産中だ。米空軍は98機の調達を予定しているが、技術的な問題による生産遅延もあり納入済なのはまだ数機。今後、年間20機前後ペースで納入を予定している。ただ、GNKはF-15EXの生産に関して、儲けがないと言っている。F-15EXの生産数は当初、200機以上を予定していたが、結局、半数以下になり、最終的な生産数も、不確実だ。GNKの米国事業の収益性の問題は数年前から言われており、2015年には旅客機のボーイング737MAXの部品供給を打ち切っており、2022年にGKNの広報担当者は電子メールで社員に向け、「企業は過去10年間、この工場に多額の投資をしてきたが、関係者全員の最善の努力にもかかわらず、施設は近年一貫して収益性の面で苦戦している」と述べ、ヘーゼルウッドにある工場を閉鎖すること通達。当初は2023年での閉鎖を予定していたが、2020年にボーイング社とGKNは軍用機に関して2023年までの継続的な協力関係を強化するため、戦略的協定を締結していたこともあり、契約に違反するとして提訴、閉鎖を延期していた。しかし、工場を稼働し続けることは財政的に持続不可能であるとGNKは主張し、2024年末での閉鎖を予定している。GKNは当初、閉鎖に伴い余剰部品を破棄する計画を立てたと述べたが、その後、F-15とF-18に必要な部品を処分しないと裁判所に保証しており、直ぐに部品が無くなることはない。
イスラエルがF-15EXを大量発注
そんな状況の中、戦争中のイスラエルは今年1月、25機のF-15EXを発注。更に4月初めには50機に拡大し、承認されれば最大180億ドルの大型取引になる。更にインドネシアも24機を購入する。F/A-18は受注を見込んでいたインドがフランスのラファールを選択した事で現在、新規受注の予定はなく、現在、製造中の機体の納品が終われば生産予定はなく、このまま受注が無ければ2025年に生産ラインを閉じる予定だったが、米海軍はボーイングに17機の生産を延長する13億ドルの契約を結んだこともあり、2027年まで生産が続くことが決定している。これだけの新規生産があれば、GKNの収益性は改善されそうだが、イスラエルのF-15EXの売却はここにきて不透明になっている。イスラエルは先日、アメリカから自制するように言われながらもそれを無視してイランに報復攻撃を実施。さらに米政府はユダヤ教超正統派大隊「ネツァ・イェフダ」をパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区での人権侵害疑惑をめぐり制裁を科す事を検討しており、両国の関係は悪化。国内世論も反イスラエルの声が大きくなっている。これ以上、イスラエルを軍事支援する事は中東状況を悪化させ、選挙にも影響が出る恐れもあり、新規の兵器の売却の見送る可能性がある。F-15EXの生産はイスラエルへの売却の有無次第になるかもしれない。