第一次世界大戦に登場してから100年、戦車は地上を支配してきた。しかし、近年、空にドローンが増えたように、地上も近い将来、ドローン・ロボットが主役になるかもしれない。米陸軍は、次代の戦闘車両(NGCV)として無人戦闘車両の開発テストを行っている。Ripsaw M5はその中でも最有力の車両だ。
Ripsaw M5とは
Ripsaw(リップソー)は米国陸軍による評価のためにHowe&Howe Technologiesによって設計・建設された開発用の無人戦闘車両 (Unmannned Combat Vehicle:UCV) 。米軍は2010年からこの無人戦闘車両について、評価テストを行っている。その後、 Howe&Howeはアメリカの大手軍需企業 Textron(テキストロン)社に買収される。 Ripsaw M5は買収後の2019年10月に発表された第5世代のRipsaw。
性能
UCVの目的は米陸軍の戦車や装甲車両と連携して、兵士の命を守るために危険な任務こなすことになり、Ripsaw M5は機動性とモジュラーシステムを備えた汎用型マルチ戦闘車だ。Ripsaw M5は無人で遠隔操作で動作する。AIを搭載することで自律走行も可能だ。車体は高さ180㎝、重量4トンと戦車や他の戦闘車両と比べ非常に小型で軽く、 C-130J輸送機への搭載、CH-47チヌークヘリのリフト輸送も可能にする。600馬力のエンジンを搭載し、最大時速96㎞/hは有し、これはM2ブラッドレー歩兵戦闘車よりも30㎞早い。戦場では地上部隊より先行して、小さな車体を活かした偵察任務を遂行することも意図されている。車両には、電気光学式カメラと360度の範囲をカバーする赤外線暗視カメラの両方を備えた監視塔が装備されている。 小型の異なる2つのドローンを搭載でき、スカイドローンで空からの偵察、ランドドローンにはアームがついており、IDE(即席爆発装置)にも対処できる。
武装
基本武装として砲塔には30㎜機関砲「Mk 44 ブッシュマスター II」が装備されている。装甲車など戦闘車両には十分な威力を有する。対戦車にはジャベリン対戦車ミサイルを搭載する。モジュラー式により、任務によって砲塔部分の換装が可能だ。
既に米軍とテキストロン社はプロトタイプの開発で契約しており、2021年から評価テストが始まる予定だ。実際に米軍に採用されるかはそれ次第ということだ。
民間モデル Ripsaw EV2
2015年には民間モデルの「Ripsaw EV2」が発表されている。これは無人ではなく有人で運転する。映画『MADMAX 怒りのデスロード』の武器将軍の車「PEACE MAKER(ピースメーカー)」はこれを改造したもの。市販はされているが受注生産になり、注文から製造まで6カ月、価格は50万ドル(5300万円)以上と高額だ。
画像出典:https://www.textronsystems.com/capabilities/innovations/robotic-combat-vehicle-rcv-team-ripsaw