ロシア、最新の防空ミサイルシステムS-500を配備するも、ATACMSに突破される

ロシア、最新の防空ミサイルシステムS-500を配備するも、ATACMSに突破される

ロシアは、先日、同国が保有する最新鋭の防空システムであるS-500の一つを、占領下のクリミア半島防衛のため移動させた。最強の盾を配備したはずだったが、S-500はウクライナ軍のミサイル攻撃を防ぎきれず、早速、攻撃を許してしまった。

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ウクライナ軍は22、23日の土日の2日間にクリミア半島に向けて、米国から供与された短距離弾道ミサイルATACMSを発射。最初の攻撃では少なくとも4発が着弾し、エフパトリア近郊の早期警戒レーダー施設に損害を与えた。ここはロシア航空宇宙軍の早期警戒レーダー施設がある場所で、攻撃時、黒煙が上がっていた事が確認されており、ロシアの軍事ブロガーは施設が攻撃され、大きな被害と大規模な火災が発生したことを確認している。また、その12時間後には、セヴァストポリに向けて、第2波の攻撃を実施。5発のATACMSが放たれ、主要な軍事基地周辺に着弾したことが確認された。ロシア側はその内4発を迎撃したと発表しているが、実際の所は不明だ。ウクライナは先月5月24日にも、クリミア半島南岸にあるロシア空軍の主要レーダーおよび航空通信センターに6発のATACMSミサイルによる攻撃を行い、同施設を破壊。クリミアのレーダー網を徹底的に破壊している。

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昨年からウクライナ軍のミサイル攻撃を受け続けるクリミア半島。ロシア軍は最新鋭の防空システムS-400を配備するなどして、防空網の強化を図ってきたが、昨年だけで5基あったS-400の内、2基が破壊され、今月13日にはS-300とS-400の破壊が確認されている。防空システムの破壊はこれだけではなく、ウクライナ軍戦略司令部は6月17日、同軍が今年5月以降、クリミア半島にあるロシア軍の防空システム15基を破壊したと発表。数十基の発射装置、15以上のレーダー基地、10以上の制御施設が破壊されたと述べている。これが事実であれば、クリミアの防空網は壊滅に近い。それを示すかのようにロシア軍は最近、クリミア半島に虎の子の「S-500プロメテウス」を配備したとウクライナ軍情報局長のキリロ・ブダノフは今月12日に発表した。S-500はロシア最新の防空システムでまだ配備前で数基しか生産されていない貴重な兵器だ。

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S-500プロメテウス

S-500は現在配備中のA-235 弾道弾迎撃ミサイルシステムとS-400を補完することを目的として2000年代に開発された防空ミサイルシステムになり、ロシアの先端技術が詰まった兵器だ。S-500のレーダーと照準システムは世界でも最先端のもので、最大600kmの交戦距離を実現しており、これはS-400の400kmの1.5倍だ。最も注目すべき特徴の1つは、通常の防空ミサイルシステムでは検知、追跡が難しいステルス機、極超音速ミサイル、低軌道衛星を含む、さまざまな標的を同時攻撃できる能力であり、ロシアの防空態勢を大幅に強化する。S-500のレーダーは戦闘管理レーダーの91N6、砲撃探知レーダーの96L6-TsP、マルチモード射撃管制レーダーの76T6、弾道ミサイル射撃レーダーの77T6の4つのレーダー車両で構成されている。レーダーは同時に10個の標的を攻撃でき、応答時間は3~4秒で、これはS-400の半分ほどになる。弾道ミサイルの場合の最大検知範囲は2,000km、航空機などの空中脅威の場合は最大 800kmを検知でき、追跡と交戦を同時に行うなど、複数のモードで動作できるため、継続的な空域のカバーと新たな脅威への迅速な対応が保証されている。ミサイル発射基は40N6M長距離地対空ミサイル4発、または77N6迎撃ミサイル2発で構成される。40N6Mミサイルの射程は最大400km、77N6ミサイルは600kmの射程を持ち、飛翔高度は180~200kmにも達するとされており、低軌道衛星上の標的も撃墜可能だ。システムは電子干渉に対する耐性が非常に高く、高度な電子戦攻撃に対しても有効性を確保できるとされている。

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S-500は既に開発を終え、あとは量産を待つばかりで、2019年に最初の10個大隊分の量産開始が宣言されている。しかし、経済制裁と労働力不足で全く量産は進んでいないとされ、本格的な配備は2025年以降を予定している。その貴重なS-500をいきなり戦時下で前線といってもよいクリミア半島に配備した形だ。数や配備場所はもちろん軍事機密で明かされていないが、一部報道ではロシアとクリミア半島を結ぶクリミア大橋を守るために配備されたとされているが、ただ東部に配備したとしてもスペック通りであれば、1基でクリミア半島全土をカバーできる。特に77T6レーダーは高速で移動する弾道ミサイルやロケット弾に最適化されているとされ、使用する77N6ミサイルには弾頭が搭載されておらず、標的に体当たりする「Hit to Kill」という”直撃破壊型”になる。しかし、今回、弾道ミサイルのATACMSによる攻撃を防ぐことができなかった。もしくは、あえて使用しなかった可能性もある。

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