ロシア、ウクライナへのソ連製兵器販売を止めるよう各国に圧力

©Rostec

ロシアはロシア/ソ連製兵器を保有する各国に対し、ウクライナにそれらの兵器を販売しないよう圧力を強めている事が分かった。もし、販売が確認された場合、ロシアによるメンテナンス、スペアパーツの供給が停止される。

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ウクライナメディア「Militarniy」の報道によると、ロシアは各国がソ連やロシア製の兵器システムをウクライナに販売することを阻止する取り組みを強化しており、忠告を守らない国に対してロシア政府は海外施設の保守ライセンスの取り消し、軍事装備の維持に必要なスペアパーツの供給が停止するなど、販売を阻止するためにさまざまな戦術を使っている。ロシア連邦軍事技術協力局のドミトリー・シュガエフ長官は、実施されている措置の一つが海外の整備会社の保守ライセンスを剥奪することだと述べた。これには、ロシア/ソ連製の軍事装備を維持するために必要なスペアパーツやコンポーネントの配送の停止も含まれる。その一例として、2022年にロシアのMiシリーズのヘリコプターのライセンスを剥奪されたブルガリアとチェコの企業を挙げた。

NATO各国から大量の西側製兵器の供与を受けるウクライナ軍だが、旧ソ連の一国で、ソ連の兵器開発製造の中心地であった同国の主力兵器は現在もソ連製、またはそれをベースに開発された兵器になり、戦闘の大分部をソ連製兵器に依存している。大量のソ連製兵器を所有していたウクライナ軍だが、ロシアの巨大戦力を前にそれらが不足すると、旧共産圏だったポーランド、チェコ、スロバキアなどは古くなったソ連製兵器をウクライナに供与した。ポーランドはライセンス生産したソ連製T-72戦車260両、またそれをベースに開発したPT-91戦車60両と300両以上の戦車を供与。チェコもT-72とBMP-1歩兵戦闘車、また各国から集めたT-72戦車90両を近代化改修して送っている。スロバキアはS-300防空ミサイルシステム、13機のMig-29戦闘機を供与した。ドイツなども東ドイツ軍が所有していたBMP-1歩兵戦闘車を供与している。

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西側製兵器の場合、訓練や修理、メンテナンス、砲弾、スペアパーツなどあらゆるものをNATOに依存、タイムラグが発生するが、慣れ親しんだソ連製兵器であれば訓練から修理までウクライナ国内でほぼ完結し、兵士やエンジニアの順応も早く、受領後直ぐに戦力化できるのが大きい。

また供与した国々はちょうど兵器近代化の転換期でもあったこともあり、ウクライナを支援する事でアメリカやドイツからより近代的な兵器を手に入れている。これらの国はロシアの圧力による影響は少なく、供与できる兵器はほぼ全て提供している。ただ、それはつまり、ウクライナへ供与可能なソ連製兵器が枯渇している事でもある。そのため、西側はソ連製兵器の新たな供給先を探している。ロシアはそれを牽制しているのであろう。

昨年世界三位に下がったが、ロシアは長らくアメリカに次ぐ世界二位の武器輸出大国であり、冷戦時は友好国に大量の兵器を供与、及びライセンス供与して生産しており、ロシア/ソ連製兵器を使用する国は多い。中央アジアの旧ソ連構成国はもちろん、インドやベトナム、北朝鮮、アルジェリア、ベネズエラなどが主要兵器として運用している。NATO加盟国でもブルガリアは未だ大量のソ連製兵器を所有運用している。

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しかし、旧ソ連のアルメニアはアゼルバイジャンに敗れたカラバフ・ナゴルノ戦争で同盟国であるロシアが全く支援してくれなかった事でロシア離れを進めている。未だアゼルバイジャンとの紛争が終結していないので、兵器を手放すことはないと思うが、西側製兵器との交換条件であれば、ソ連製兵器を手放すだろう。

また、ロシアと同盟関係にあるカザフスタンは昨年10月にMiG-31、MiG-27、MiG-29、Su-24といったソ連製中古戦闘機100機以上を競売に掛けた。機体自体は既に飛行不可能な状態だったが、その内、7割の81機をアメリカが226万ドルで購入したと言われている。目的は不明だが、ウクライナ軍機のための部品どり、おとり用のデコイとして購入したと言われている。

ロシアは現状、自国軍向けの兵器生産で手一杯とされ、各国の兵器納入、スペアパーツの供給が遅れている。エジプトからは販売したヘリ用エンジンを買い戻したとの報道もある。インドに輸出予定だったT-90S戦車を戦線に投入しているのも確認されている。

その影響もあり、各国ではロシア/ソ連製兵器離れが進んでおり、ロシアが世界三位に後退した理由でもある。圧力の前に既にスペアパーツの供給が遅れており、圧力を強めれば更なるロシア製兵器離れにつながる可能性も否定できない。

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ロシア、ウクライナへのソ連製兵器販売を止めるよう各国に圧力
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