ロシアのプーチン大統領は16日、ロシア軍に18万人の現役兵を追加する法令に署名した。これにより現役兵の規模は150万人に達する予定で、米国、インドを抜き、中国人民解放軍に次ぐ世界2位の規模となる。
プーチン大統領がウクライナ侵攻開始以降、軍の増員を図るのは今回が3回目になる。一度目は2022年9月だ。2月末に開始したウクライナ侵攻。電撃戦で首都キーウ攻略を狙ったが侵攻は失敗に終わり、3月には早くも膠着状態となり、4月にはキーウ周辺から撤退。5月にはウクライナ軍の反撃により北部方面に展開していたロシア軍は国境付近まで後退。結果、ロシア軍はキーウ周辺及び北部から撤退する事に。しかし、南部ではマリウポリを制圧、東部では親ロシア武装組織と共にルハーンシク州を制圧する。しかし、ウクライナ軍は西側からの重火器の追加支援を受けると8月から東部南部で反転攻勢に出る。今度はウクライナ軍に押される形となったロシア軍、プーチン大統領は9月21日に予備役の部分的動員令を発令。2023年11月までに30万人が招集された。その結果、ロシア軍は115万人規模となった。
そして、2回目となると2023年12月だ。この年、ロシア軍は10か月に及ぶ戦いの末、東部の要衝バフムートを5月を陥落、制圧する。この戦いでは損失を顧みない人海戦術による無謀な突撃を繰り返し、その代償としてロシア軍は10万人以上の兵員を失ったとされている。6月には西側製の戦車や装甲車を多数手に入れたウクライナ軍、南部東部で大規模な反転攻勢を開始。ロシア軍は多大な損害を出しながらも反転攻勢を阻止、戦線を維持した。ウクライナ軍の反転攻勢に耐えたロシア軍は再度、侵攻を開始。東部ドネツク州の完全制圧を目指し、同州の要衝であるアウディーイウカに10月から猛攻撃を仕掛けた。しかし、ここでもバフムートの時と同様、無謀な突撃を繰り返し、1日の死傷者数が1000人超えるなど、1日当たりでは過去最大の損失を出す。プーチン大統領は兵力を補充すべく、12月に兵士の定員を132万人に増やす大統領令に署名、17万人の増員を公式に命じた。2024年3月にアウディーイウカを制圧するも、数万人の死傷者を出している。
そして、今回、18万人を追加する3回目の動員に署名。ウクライナ侵攻前85万人だったロシア軍の兵力は150万人になる。これはアメリカの132.8万人、インドの145.5万人を抜き、中国の203.5万人に次ぐ、世界第2位の兵力となる。ショイグ前国防相は2023年1月に今後3年以内にロシア軍の兵力を150万人まで引き上げる目標を発表していたが2年も前倒しした形だ。また、ロシア国防省は予備役の徴収年齢を2023年に5歳引き上げており、元上級将校は最大70歳まで動員に応じる必要がある。ロシアには200万人の予備役兵がいるとされ、動員65万人が全員予備役だったとしてもまだ100万人以上が動員できる。
ウクライナ侵攻前、ロシア軍への入隊の年齢制限は18~40歳に定められていたが、2022年5月に年齢上限を撤廃する法案を可決し、18歳以上であれば、年齢関係なく入隊が可能に。事実上、志願兵への門戸を成人全国民に広げた。2023年1月には、徴兵の年齢制限の引き上げにも着手。これまでは18~27歳のロシア国民男性が対象だったが、上限を30歳まで引き上げている。
The real loss is for Russia, and if the United States fulfilled its promise, Ukraine would have won long ago pic.twitter.com/WG1OL8PZ7N
— Виталий Кузнецов (@vk4786161) September 18, 2024
ただ、ロシア軍の兵力150万人はウクライナで失った兵を計算に入れていない。ウクライナ国防省は2024年9月17日時点で63万人以上の兵をロシア軍は失ったと報告している。ただ、これはウクライナ側の統計なので、誇大に盛っている可能性がある。しかし、イギリスなどは今年9月までのロシア軍の死傷者数を最大61万人とウクライナ側と近い数字を報告しており、アメリカは35万人と推定している。ロシア語メディアでは戦死者11万人以上と推測、傷病者は戦死者の3倍以上と言われるので30万以上の損失があると推測される。
この数字からロシア軍は30~60万人ほどの兵力を既に失っている可能性が高い。また、ロシアは春と秋の年2回、15万人の徴兵を行っている。つまり、30万人は徴収兵になるわけだが、徴収兵はウクライナの戦線に投入しないとプーチン大統領は国民に約束している。現在、ウクライナに投入されているロシア軍の兵士は60~70万人と推測されており、現在の戦力規模の132万人の約半数になる。