国を守るため志願兵が多く集まるウクライナ軍に対し、士気の低いロシア軍は失った兵員の補充が思うようにいっていません。徴収兵は集めても法律上、戦場に送ることはできないため、戦力の回復は容易ではありません。そこで、ロシア軍は各旅団が抱える訓練部隊を再編制して投入することを計画しているとフォーブスが報じました。報道によればロシア軍は各旅団と連隊の余剰人員と在庫装備を編制して、大隊レベルの大隊戦術群を形成するように命じたと指摘。しかし、実はこれは訓練部隊を対象にしたものであり、その後の各部隊の戦力回復力を失わせることになります。
大隊戦術群(BTG)
ロシア陸軍は大隊戦術群(BTG)と呼ばれる高水準の即応能力を保った諸兵科連合機動部隊を編制しています。各大隊は基本的に600~800人の将校と兵士からなり、内200人が歩兵、10両の戦車と40両の歩兵戦闘車や砲兵、防空兵器で構成されます。高度な火力と機動力を備え、大隊単独で作戦行動も可能です。ロシアがウクライナに侵攻する前、ロシア陸軍には168のBTGがあったとされ、その内、4分の3を占める125のBTGがウクライナに投入されたとされています。
少なくとも4分の1のBTGが消失
しかし、ウクライナ国防省の発表によれば、ロシア軍はこれまでに3万人の兵士、1400両の戦車、3000両以上の戦闘装甲車を失っているとされ、これは125のBTGの内、少なくとも半分以上を失ったことになります。第三社機関のOryxの統計でも少なくとも4分の1以上、36のBTGを失っている可能性があり、高度な戦術ユニットがこれだけ機能不全となれば被害は甚大です。しかし、ロシア軍にはまだ投入されていない43のBTGがあります。これらを投入して、失ったBTGの補填をすればいいのでは?と思いますが、これらのBTGは飛び地のカリーニングラード、バルト方面などロシアの安全保障上、需要な拠点に配置されており、これを動かすことはできません。
かといって、失った戦力を補充しなければ、西側の援助で火力が増すウクライナ軍に対抗できません。4月にキーウ周辺から撤退した際、ロシア軍は周辺から予備戦力を集めBTGを再編成、5月上旬には110大隊まで回復させたと米国防省は報告しています。
Drone footage documenting the Russian 2nd attempt to cross Siverskyi Donets River from the same area near Bilohorivka.#Russia #Ukraine https://t.co/jXFackifP1 pic.twitter.com/iE3Y57r3DH
— BlueSauron👁️ (@Blue_Sauron) May 14, 2022
しかし、その後もドネツ川を渡ろうとした2個のBTGがウクライナ軍の反撃を受け全滅するなど、引き続き消耗が激しくなっています。そこで、次の手としてロシア国防省は訓練部隊に目を付けました。
訓練部隊の投入
ロシア陸軍の旅団、または連隊には必ず2つのBTG大隊があります。そして、これとは別に3つ目の大隊「第3大隊」が存在します。この大隊は主に部隊の訓練を行う訓練部隊で新兵や徴収兵の訓練を行っています。訓練を行うわけですから、基本要員は練度の高い正規兵になります。訓練が終わっていない新兵と徴収兵は連れていけませんが、85ある旅団の中から訓練要員と訓練用の装備を集めれば、30~40の新しいBTGを編制できると米国の軍事アナリストは述べています。しかし、それは諸刃の剣であり、訓練を行う部隊が居なくなれば、新しい戦力を創出することができなくなり、部隊の回復力を失うことになり、失ったBTGとは異なり、これを補うことはできません。
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