スロバキアがウクライナに送る13機のMig-29戦闘機の内、一部の機体に問題が起きており、これがロシア人の技術者によって意図的に行われた可能性があるとスロバキアの国防相が述べています。
スロバキアのヤロスラフ・ナド国防相はウクライナに送る予定のMig-29戦闘機について「部品を取り、機体を検査したところ、いくつかの問題が見つかった。飛行はできたが、それは戦闘能力も備えていたという意味ではない」と述べました。つまり、戦闘能力になんらかの不具合があり、戦闘機として正常に機能しないことを意味します。これはウクライナに提供する13機全機に見られたのではなく、ある技術者が検査を行った機体のみでした。その技術者はロシア人であり、このロシア人が意図的に何か問題が起きるよう細工したとされています。
Mig-29はソ連のミグ設計局によって1970年代に開発され、1980年代に運用が始まった第4世代戦闘機です。Mig-29のロシア軍向けの生産は終了していますが、海外輸出向けの生産はまだ行われており、既存機体向けのエンジン、スペアパーツの生産も続いています。スロバキアは1993年にチェコ・スロバキアから分離独立すると、Mig-29が同国の主力戦闘機となります。2004年にNATOに加盟すると、翌年、Mig-29をNATO基準にアップグレード、NATOの航空指揮統制に統合されたナビゲーションおよび通信システム、敵味方識別(IFF)システム、LCD多機能ディスプレイを備えた新しいグラスコックピット、および新しいデジタルミッションコンピューターを装備します。とはいえ、機体自体はソ連製であり、運用維持、大規模修理のためにロシアから長期に渡って技術者を招聘し、機体整備に当たらせていました。
ウクライナ侵攻後もロシア人技術者を雇用
2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻すると、スロバキアはウクライナへの軍事支援として、4月にS-300防空ミサイルシステム、T-72戦車を提供し、本格的な支援に乗り出します。その後、同年7月に8月に退役を迎えるMig-29のウクライナへの供与の意思を示します。本来であれば、侵攻が始まって直ぐの3月、4月あたりにロシア人技術者との雇用契約を止めるべきだったのですが、その後も雇われ続け、2022年後半まで空軍基地で働いてました。Mig-29のウクライナの提供の話が上がった7月以降に、このロシア人が何かしらの細工を機体に行った可能性があります。それが愛国心によるものなのか、本国からの命令によるものなのかは分かりませんが、ウクライナ侵攻後、スロバキア国内では多くのロシア人外交官がスパイ容疑で国外追放されています。
Mig-29の不具合の詳細は不明ですが、彼が検査を行った機体はエンジン改修が行われ、飛行時間が350時間持続するはずでしたが、僅か70時間の稼働で、オーバーホールを余儀なくされています。スロバキアは3月に先行して4機をウクライナに送っていますが問題があった機体が含まれているのかは不明です。ただ、今のところ、これらの問題は致命的ではなく、ウクライナ国内でも対応が可能です。ただ、何が仕掛けられているか分かりませんし、隅から隅まで確認する必要があり、即戦力と見込んでいた機体の整備に余計な時間とコストが掛かるのはウクライナにとっては痛手です。
Source
Slovak defense minister: Russian technicians possibly sabotaged Ukraine-bound MiGs