A-10攻撃機の退役に伴い米空軍のA-10Cデモンストレーションチームの活動は今年が最後に

A-10攻撃機の退役に伴い米空軍のA-10Cデモンストレーションチームの活動は今年が最後に
USAF

2023年から大規模な退役が始まっているアメリカ空軍のA-10サンダーボルトII攻撃機。それに伴い、40年以上に渡って活動してきたA-10デモンストレーションチームの活動も今年が最後になります。

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米空軍の第355戦闘航空団は3月20日のプレスリリースで2024年がA-10Cデモンストレーションチームの最後のシーズンとなることを発表しました。この決定は2023年から始まったA-10CサンダーボルトIIの退役計画の一環です。同航空団は40年に渡って航空ショーでA-10による展示飛行を行ってきましたが、今年がその集大成となり、2024年3月23日から10月5日の間に全米で行われる18公演を行い、デモンストレーションチームとしての役目を終えます。

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第355戦闘航空団とは

A-10のデモンストレーションチームが所属する第15空軍第355戦闘航空団はアリゾナ州ツーソンのデイビス・モンサン空軍基地を拠点とするA-10 サンダーボルトIIを運用する航空団の一つです。1974年に最初のA-10が配備され、空軍初のA-10運用部隊となります。1979年までにはそれまで運用してきたF-105サンダーチーフ戦闘爆撃機からA-10に全機移行します。同年、部隊は戦闘部隊としての配備ステータスを解除され、第355戦術訓練航空団として指定され、米空軍のA-10サンダーボルトII運用訓練部隊になります。1991年の湾岸戦争では、同航空団で訓練を受けたA-10パイロットが戦車1,000両、車両2,000両、大砲1,200門、およびヘリコプター2 機を破壊しています。同年、訓練航空団を解除され、再び戦闘航空団に再指定されます。

A-10のデモンストレーションチームはもともと東西の2つのチームで構成されていましたが、2011年に一度活動停止に。その後、2012年と2017年にデモンストレーションの為に再飛行し、2018年にチームとして再稼働したのが現在のチームです。10人のメンバーからなるチームは、パイロット一人、監督官一人、下士官一人、三人のクルーチーフ、その他エンジニアで構成されています。しかし、それも今年で解散となり、航空ショーでも見れるのも今年が最後の予定です。

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A-10サンダーボルトIIとは

ウクライナ空軍のパイロットはA-10の操縦訓練を受けていますが、A-10の供与を米空軍は否定しました
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ベトナム戦争で空対地攻撃を行う中で従来のジェット機型の戦闘機では速度が速すぎ、高度が高すぎ、プロペラ機では運動性が不足し、どちらも近接航空支援 (CAS) に適さないとして開発が始まったのがA-10サンダーボルトII攻撃機です。近接航空支援航空機として1970年代に設計開発され、1977年に地上攻撃機として米空軍で運用が始まります。機体は頑丈な装甲で守られ、機首には強力なGAU-8 30mmアベンジャー ガトリング砲、最大6発のAGM-65 マーベリック空対地ミサイル、その他、誘導爆弾、対地ロケットを搭載できます。A-10が最も活躍したのが、1991年の湾岸戦争になり、約140機のA-10が参加、1000両の戦車を破壊したことで、戦車キラーとして名を馳せます。その後もアフガニスタン戦争、イラク戦争に参加、タリバンやISISの掃討作戦に参加、CASとして地上部隊を支援し、陸軍からは非常に人気の機体です。

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2024年から大規模な退役を開始

そんな期待も間もなく運用から半世紀を迎えようとし、機体は老朽化・陳腐化しつつあり、更に戦闘機や対空兵器、無人機の進化に伴い、その有効性、存在価値は徐々に薄れてきています。米空軍はそんなA-10を削減し、空いたリソースを新しいF-35や無人機に充て替えたいと考え、2014年から5度に渡ってA-10の退役を要求してきました。しかし、議会に所属する元軍人議員からA-10の人気は高く、その要求は棄却されます。しかし、ロシア・ウクライナ戦争でA-10と同じ設計思想であるソ連製のSu-25攻撃機が携行式対空ミサイル(MANPADS)によって多数撃墜されていることが影響したのか、2022年12月にようやく、議会承認が降り、21機の退役が決定、翌年2023年にようやく大規模な退役が始まりました。2023年度には42機の退役が決定、これらは今年退役を迎えます。2025年度の予算要求では52機の退役を要求しています。退役が始まる前、281機のA-10が運用中だったので、今年中に残りは218機に。来年には200機を下回ることなります。米空軍は2029年までに全機退役させる意向なので、毎年40~50機ペースでA-10は退役することになります。A-10退役後の第355航空団にはF-35Aステルス戦闘機が配備される予定です。

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