韓国の尹錫悦大統領は12月3日22時13分、非常戒厳を宣言。戒厳令が布かれたあと、軍が投入され、国会議事堂の封鎖と議員の拘束・逮捕が試みられた。これらに投入された部隊が韓国陸軍特殊作戦司令部と首都防衛司令部所属の精鋭部隊である事が分かった。
总统周围和国防部周围已经没有军队了 pic.twitter.com/I1SLz12gdJ
— Sweet Clay (@Clay_PLAPAP) December 3, 2024
韓国MBCの報道によれば、戒厳令後、国会議事堂に特殊作戦司令部傘下の第707特殊任務団、第1空輸特戦旅団、そして、韓国陸軍の大統領直属部隊の司令部である首都防衛司令部から第35特殊任務隊など2部隊、計4部隊が投入された。一部の部隊はUH-60ブラックホークヘリに乗り、空から国会議事堂の敷地に降下。国会周辺でも軍の特殊小型車両が確認されている。兵士はフル装備でヘルメットには暗視ゴーグル、プレートキャリアを装着、戦術無線を背負う兵も確認されている。そして、手にはライフルを所持。実弾の有無は不明だが、装填されていた可能性は高い。兵士は全員身元がバレるのを防ぐためバラクラバを着用していた。部隊は3日朝から既に戒厳令発令に向けて出動準備をしていたとされ、大統領は戒厳軍司令官を任命していた。
戒厳司令官の朴安洙陸軍参謀総長は「戒厳司令部布告令(第1号)」を通じて「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる。自由民主主義体制を否定したり、転覆を企てる一切の行為を禁じ、偽ニュース、世論操作、虚偽扇動、すべての言論と出版は戒厳師の統制を受ける」と宣言。兵士は国会議事堂への出入りを封鎖し、国会議員の逮捕、拘束を試みた。
第707特殊任務団
第707特殊任務団、通称「白虎部隊」は韓国陸軍配下の特殊部隊で1988年のソウルオリンピック開催決定を契機にテロ対策部隊として1982年に創設された。200人ほどの隊員を抱えている。韓国軍にいくつかある特殊部隊の中でも最強とされ、常に最高の装備が支給され、その実力は米陸軍のデルタフォース、英陸軍のSASに匹敵すると言われている。平時は国内の対テロ及び海外派兵作戦が基本任務だが、北朝鮮と再び戦争が始まれば、北朝鮮に潜入、北朝鮮のトップを殺害する「斬首作戦」の任を遂行する。
第1空輸特戦旅団
第1空輸特戦旅団、通称「イーグル部隊」は、いくつかある韓国陸軍特殊部隊の内、一番最初に創設された部隊で米陸軍のグリーンベレーから訓練を受け1958年に創設された。ベトナム戦争に参加、また、これまで韓国で起きた軍事クーデターのほぼ全てに参加しており、1979年12月12日に起きた軍内部の反乱事件「粛軍クーデター」では陸軍本部と国防部を武力で占領している。今回の戒厳令出動では窓ガラスを割り、議事堂に侵入、ドアを蹴破り、非武装の民間人に銃口向けたり、携帯電話を奪おうとする様子が撮影され、批判されている。
首都防衛司令部
首都防衛司令部はその名の通り、韓国の首都ソウル市を防衛する任務を担っている大韓民国陸軍本部直轄の司令部であり、韓国軍傘下の司令部の中で唯一大統領直轄命令体系に所属している司令部である。北朝鮮との戦争勃発時はすべての展開作戦統制権は米韓連合軍司令部が有する事になっているが、指揮権が米韓連合軍司令部に渡っても首都防衛司令部はそれに干渉を受けず、大統領の命令でのみ作戦を遂行する。
今回の戒厳令で投入された軍の規模は不明だが、それぞれ、中隊規模とされ、280名ほどと報告されている。韓国の大統領が前回、戒厳令を宣布したのは1980年。軍事政権に対する民主化要求の蜂起である「光州事件」が起きた年であり、この時、韓国軍は約200人の市民を虐殺した。その記憶もあり、韓国国民は今回の戒厳令発令に激しいアレルギー反応を示し、真夜中ながら国会議事堂に集結。戒厳令発令から僅か3時間後には、190人の国会議員が集まり、戒厳令解除決議案が可決され、戒厳令は僅か6時間で解除された。その間、軍による発砲はなく、一部の兵士は国会議事堂を後にする際、集まった市民に頭を下げて「申し訳ありません」と謝罪したとされる。