訓練中のF-16が民間人を機銃掃射した事故が26億円で和解

訓練中のF-16が民間人を機銃掃射した事故が26億円で和解

2017年に訓練中の米空軍のF-16が誤った対象に機銃掃射を行った事故で死亡したチャールズ・ホルブルック氏(53)の家族は3年間の訴訟の上、不法死亡訴訟によって米空軍と和解しました。米空軍はこれにより家族に2463万ドル、日本で約26億円の和解金を支払うことになります。

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事故の概要

チャールズ・ホルブルック氏は元米空軍下士官で退役後、軍事航空学の研究開発企業であるユナイテッドテクノロジーズに入社。民間請負業者として近接航空支援の分野に身を置きます。2017年1月31日、F-16の照準機器は開発する同社のスタッフとしてはホルブルックさんはオランダ空軍用のレーザーイメージングデバイスのデモを行うために基地を訪れ、米空軍の招待でF-16の夜間攻撃演習の見学のためにニューメキシコ州のホロマン空軍基地近くのホワイトサンズミサイル山脈に向かいます。

F-16

演習には4機のF-16が参加。2機に教官、2機に訓練生が搭乗していました。演習の内容は標的近くに観測手がいる中での実弾射撃です。ホルブルックさんは空軍の観測手と一緒に地上で観測をサポートする役割でした。ターゲットは観測手から800メートル離れたトラックの車列です。

F-16

18時21分に演習が始まり、ホルブルックさん達の車列の上空をF-16が飛行するとその車列に向かって20mm機銃のM61A1バルカン砲を掃射します。機銃から放たれた155発の弾丸は車の一台を爆破、そしてホルブルックさんの頭に当たります。パイロットは標的を観測手の車列と標的のトラックの車列を間違えて攻撃してしまったのです。

ホルブルックさんは急いで病院に運ばれますが1時間後に死亡が確認されます。

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事故の原因

なぜ、このような事故が起きたのでしょう。要因はいくつか挙げられています。

初の夜間訓練

訓練生が夜間の実弾射撃訓練を行ったのはこれが初めてでした。誤って攻撃したパイロット訓練生がF-16の飛行中に暗視ゴーグルを着用したのは初めてであり、照明のない中でターゲットを高角度から機銃掃射を行うのも初めてでした。また通常は訓練生の演習では2人の乗りの複座機に訓練生と教官が一緒に乗り、何かあれば教官が直ぐに制御できる仕組みになっています。しかし、この日は単独で搭乗しており、誤りに気づいても教官が制御できるような状態ではありませんでした。

確認不足

標的のトラックの車列と観測手の車列は暗闇ではどちらも同じように見え、判別するのは難しく、その上、両者の距離は800メートルと近距離にありました。観測手には味方を判別するための赤いストラボが設置されていたとありますが、攻撃したパイロットは見えなかったと語っています。本来、赤いストラボも確認して、標的の識別を行ってから攻撃すべきですが、それを確認しませんでした。訓練生が「目標捕捉」と教官に伝えましたが、教官はそれに対して標的の様子を説明するようにも求めていません。その上、訓練生は三度も観測地点を間違えていましたが、三度目に教官は標的と思われる物に攻撃するように指示しています。これは訓練生が正しい目標を狙っているかどうか確信が持てない場合、実弾を発射することを禁じる安全プロトコルに違反しています。最初の2回の失敗による危険信号の警告を無視していました。

連携不足

地上の観測手は異なる空軍部隊から派遣された2人の陸軍地上連絡官、4人の統合末端攻撃統制官、そしてホルブルックさんらユナイテッドテクノロジーズのスタッフ4人。彼らは一緒に空中誘導訓練を行うの初めてでしたがミッションブリーフィングは短いものでした。その上、ブリーフィングではパイロットと観測手とで別々に行われていました。これは複雑な夜間訓練を行う上では不十分でした。

安全対策不十分

そして、亡くなったホルブルックさんはヘルメット、防護着のフラックベストを着用していませんでした。

これらの理由から、原告は空軍が夜間の訓練に対して十分な監視、安全確保。準備を怠っていた訴え、争っていました。

ホルブルックさんは22年8か月間米国空軍に勤務し、統合末端攻撃管制官などを務め2005年に曹長で引退します。その間、ブロンズスター、空軍功労勲章、空軍表彰勲章を受章するなど空軍の功労者でした。

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https://www.airforcetimes.com/news/your-air-force/2020/10/16/family-of-contractor-killed-in-f-16-strafing-accident-will-get-payout-in-settlement-with-air-force/

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