ロシア軍の電撃戦はわずか2日でウクライナの首都キエフにまで迫り、続々と地上軍が進軍してきている。地上軍の進軍と合わせて気になる動向があり、それがチェチェン共和国の治安部隊がロシア軍の一部としてウクライナへの進軍を始めていることだ。
殺戮部隊ハンター
#Chechen troops, Praetorians for Putin’s proxy ruler Ramzan Kadyrov, filmed somewhere in #Ukraine. pic.twitter.com/WpAlRcxYiL
— Kyle Orton (@KyleWOrton) February 24, 2022
デイリーメールの報道によると、チェチェン軍の特殊部隊で「ハンター」と呼ばれる部隊が既にウクライナ領内に入っているようだ。イスラム教徒である彼らがウクライナの森の中で祈りを捧げる姿がSNSに投稿されている。彼らの役目はプーチン政権がリスト化したとされるウクライナの現政権の幹部や政府関係者、ロシアがネオナチと指定した者を拘束、拘束が難しい場合は殺害も許可されている。それにはもちろんゼレンスキー大統領やその家族も含まれる。各兵士にはアメリカがイラクで兵士に配ったようなリストに載っている者の顔写真と名前が入った「トランプ」が配られているようだ。チェチェンの特殊部隊はロシア特殊部隊のスペツナズと同様の訓練を受けているとされ、暗殺、拷問、拉致、破壊工作といったスキルを持っている。彼らは既にロシア軍と共にキエフ市内に入ったとされている。
1万の突撃部隊
По данным Baza, 10 тысяч чеченских силовиков готовятся отправиться в Украину, предположительно, в Мариуполь. pic.twitter.com/QQ1IUxqI6q
— The Insider (@the_ins_ru) February 25, 2022
さらにロシア軍に加わるために支援部隊として1万人のチェチェン軍兵士が2月25日に出発したとされ、首都グロズヌイで開かれた決起集会の様子がSNSに投稿された。最大7万人の派兵が可能とされている。
かつてロシアの敵だったチェチェン
ロシア南部、ジョージアに隣接する場所にあるチェチェンは18世紀からロシアの侵略と迫害を受け、1990年以降、二度に渡ってロシアを相手に独立戦争を仕掛けたイスラム系民族だ。しかし、二度ともロシア軍の武力によって制圧され、二度の戦いで30万人以上のチェチェン人が亡くなっている。第二次紛争が終わってから13年しか経っておらず、多くの人がロシアに対してよい感情を持っていないはずなのだが、今のチェチェンはプーチンの傀儡政権によって完全に牛耳られてしまっている。
紛争終了後、プーチン主導によって独立派であったアフマド・カディロフを指導者に置き、プーチンは中央に逆らわず、忠誠を誓い、おとなしくすることを条件に自治権と経済的支援、チェチェン国内であればカディロフが何をやってもよいという自由(黙認)を与え、カディロフはプーチンの犬となった。その後、アフマドは独立派に暗殺されるも息子のラムザン・カディロフが後を継いでいる。
ウクライナに派遣されるのカディロフの私兵
カディロフは自身の軍隊を持つことも許可され「カディロフツィ」と呼ばれる私兵の治安部隊(準軍事組織)を創設。その力を持って独立派、反政府的な者を弾圧、それは国外にも及ぶ。カディロフツィは一応、ロシア内務省傘下にはなるがカディロフの命令以外では動かない。しかし、プーチンの要望を受け、シリアやウクライナ東部紛争の親露派武装組織にも派遣されている。彼らがなぜ、ロシアのために他国と戦うのかというとカディロフに仕えることで他の人よりもお金と地位、よりよい生活を得られるからだ。今回のウクライナの派兵もプーチンからよい条件の提示があったのであろう。ただ、一般のロシア軍兵士よりも待遇が良いとされ、ロシア正規軍と軋轢があるという情報もある。
また、彼らは暴力的で残忍とされ、目的の為なら誘拐、拷問、殺人何でも行う。シリアやウクライナ東部でも現地の兵に代わり拷問の役割を担っていたとされている。
チェチェン人部隊の派遣の意図は分からないが、正規軍ではなく、私利私欲で動く彼らはいわば傭兵と同じで、ウクライナで何をしでかすか分からない。殺害数に応じて報奨金を出すという情報もある。もし、何かしてもロシア正規軍でない彼らがやったこととしてプーチンは責任逃れをする可能性も高いし、彼らの犠牲に関しては国内世論の反発も少ないのでそういった算段もあるかもしれない。
ウクライナ側に付くジョハル・ドゥダエフ大隊
ロシアから分離独立を目指すチェチェン・イチケリア共和国のジョハル・ドゥダエフ大隊はウクライナ側に加わることを発表。彼らは2014年から東部での親露派との戦いに協力している。ロシア側で参戦するチェチェンのカディロフとは別の分派。 https://t.co/N0WEHaStUp
— ミリレポ (@sabatech_pr) February 27, 2022
チェチェン人の中には反ロシア感情を持つ者もまだ多くおり、チェチェン共和国とは別の分派で未だロシアから分離独立を目指すチェチェン・イチケリア共和国の一派でジョハル・ドゥダエフ大隊はウクライナ側に加わることを発表している。彼らは2014年から東部での親露派との戦いに協力しており、ウクライナを部隊にかつて共に戦ったチェチェン人同士の戦いという悲劇も起きるかもしれない。
Source
https://www.thetimes.co.uk/article/chechen-warlord-promises-shock-troops-for-invasion-zjn5l8cjh