
米空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)は新たに導入する軽攻撃機観測機に、冷戦時代の象徴的な近接航空支援プラットフォームにちなんで「OA-1K スカイレイダーII」という名前を付けた。
空軍特殊作戦司令部は2月27日のプレスリリースで、導入予定の最新の軽攻撃機観測機「OA-1K」を正式に「OA-1K スカイレイダー II」 と命名する事を発表した。AFSOCのリーダーたちは27日の特別航空戦シンポジウムでこの発表を行った。この名称は、1946年から 1980年代初頭の冷戦下で運用されていた「A-1 スカイレイダー」の頑丈さと多用途性を新たに継承するものだ。空軍特殊作戦司令官のマイケル・コンリー中将は「スカイレイダー IIに興奮しています。これは我々だけが持つ能力であり、他の国々が今のところ必要としていることにすら気づいていないかもしれない何かを形作ることができると考えています。あらゆる紛争に適応できるコスト効率の高い有人航空機であり、近接航空支援、精密攻撃、武装情報収集、監視、偵察を通じて、特殊作戦部隊や統合軍を支援する能力を備えています。」と語っている。また、クレイグ・プラザー准将は「AFSOCは永続的な世界規模の任務を担っています。スカイレイダーIIが第5世代や第6世代の戦闘機と競合することは想定していませんが、世界中で航空支援を受けている部隊に価値をもたらすでしょう。」 と述べた。
初代A-1 スカイレイダー

初代スカイレイダーは第二次世界大戦中に開発が始まり、戦後の1945年から量産、配備が始まったプロペラとピストンエンジンで動くレシプロ機だ。攻撃機として空軍、海軍、海兵隊に配備され、1950年の朝鮮戦争で艦載攻撃機として初めて実戦に参加する。ベトナム戦争では豊富な兵装で近接航空支援機として重宝され地上部隊に強力な火力支援を提供した。ジェット機全盛の時代となっていたこの時代、レシプロ機のスカイレイダーは時代錯誤と言われるも、ベトナム軍のMig-17ジェット戦闘機を撃墜するなど空中戦でも戦果を上げている。また、ベトナム戦争中、600万ポンド目の爆弾投下を記念して、トイレ爆弾を投下した事でも有名だ。

パイロット保護のためにコックピット周辺に装甲板を装備しており、1968年9月1日には空軍のウィリアム・A・ジョーンズ3世大佐が任務中、機体が被弾し重度の火傷を負ったにもかかわらず、基地に戻り、被弾しても飛行を継続できることを示し、その頑丈さと耐久性をベトナム戦争で証明している。とはいえ、戦争中65機を失っている。スカイレイダーは長い滞空時間と大量の兵器を搭載できる頑丈で生存性の高い航空機として1980年代初頭まで活躍した。
二代目スカイレイダー

このスカイレイダー名を新たに受け継ぐのが「OA-1K スカイレイダーII」だ。スカイライダーIIは古くなったU-28A Dracoに代わる機体として、近接航空支援、精密攻撃、ISRミッションを実行するために、新たにAFSOC採用された。同機はアメリカの軍需企業L3Harrisと航空機メーカーAir Tractorが共同で開発する軽攻撃機AT-802U Sky Wardenが元であり、この機体のベースとなっているのがターボプロップエンジン搭載のプロペラ機であるエア・トラクターAT-802だ。農薬散布の農業用航空機、空中消火の消防用航空機として開発された機体で、これを装甲・武装化したものがAT-802Uになり、OA-1K スカイレイダーIIはそれをAFSOCの要件に合わせてバージョンアップしたものになる。
初代のスカイレイダー同様に二代目も頑丈さが売りで、防漏燃料タンクを備え、コックピットとエンジン回りは装甲で保護され、高張力鋼管の機体は衝撃を吸収する。初期のプロペラ機によく見られるレトロな「3 点式」設計を採用した着陸装置構造は、整備された滑走路が無くとも、平地の砂利や砂地でも離着陸が可能な仕様になっており柔軟な運用が可能だ。
また豊富な兵装も前身の機体と一緒で翼の下に8つのパイロンがあり、空対地ミサイルのAGM‐114ヘルファイアといった精密誘導ミサイル、誘導爆弾、ロケットポッド、機関銃ポッドなど、最大 2.7 トンの兵器やその他のセンサーデバイスを搭載できる。
機体の燃費効率は非常に高く、通常の戦闘荷重の戦闘行動半径は370km、失速速度は169km/hと低速での飛行が可能で、最大6時間連続飛行できる。機体は約7時間で分解でき、輸送機に積み込まれ、目的地に到着してからほぼ同じ時間で再組み立てが可能と、展開する地域を選ばない。
ただ、最高速度は394km/h、巡航速度は330km/h、高度2400mというスペックが示すように対空能力は乏しく、基本的には制空権を握った、脅威が少ない地域での運用を前提として、武装組織といったいわゆる非対称戦争での運用を想定した、運用コストが安価なCOIN機の位置づけになりる。ただ、近年は武装組織でも携行式対空ミサイル(MANPADS)を持っている事が確認されている。また、機体は2020年に検討が始まり、2022年8月に調達が決定したが、対テロ戦争のピークは超えており、現在は対ロシア、対中国など正規軍との対峙を見据えた戦力の需要が増している。
それもあってかAFSOCは当初75機のスカイレイダーIIの調達を予定していたが、昨年3月、購入計画を75機から62機に縮小している。最初の量産型機は2023年10月に納入される予定だったが、遅延しており、現在、最初の運用型機は3月31日の納入を予定、トランプ政権が軍に予算削減が迫っている中、更なる削減も考えらる。