黒海艦隊哨戒艦セルゲイ・コトフの沈没は自爆無人艇10隻による飽和攻撃

黒海艦隊哨戒艦セルゲイ・コトフの沈没は自爆無人艇10隻による飽和攻撃

3月5日にウクライナ軍の自爆無人艇の攻撃によって沈没したロシア海軍黒海艦隊のProject 22160哨戒艦「セルゲイ・コトフ」。ロシア側によって攻撃時の詳細が判明しており、総勢10隻にも及ぶ飽和攻撃をうけていたことが分かりました。

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3月5日、ウクライナ国防省傘下の諜報機関GRUは、クリミア半島東部ケルチ海峡近くで海軍の自爆無人艇MAGURA V5がロシア海軍黒海艦隊に所属するProject 22160哨戒艦「Sergey Kotov(セルゲイ・コトフ)」を攻撃し、沈没させたことを発表しました。攻撃は5日火曜のまだ空が暗い早朝に行われました。セルゲイ・コトフは無人機の接近には気づいており、回避行動、機銃によって迎撃を行っていたのが映像でも確認できます。

セルゲイ・コトフの戦場からの映像も公開されており、艦上からライフルで迎撃行動をとっている船員の姿が確認できます。しかし、それもむなしく、無人艇は艦に衝突、激しい火柱が上がるのが確認できます。セルゲイ・コトフは船尾及び左舷に無人艇の攻撃を受け沈没しました。

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無人艇10隻による飽和攻撃

この攻撃時の詳しい詳細がロシア側によって明らかにされています。ロシア側の主張によれば、乗組員はあらゆる力と手段を使ってウクライナ海軍の特攻無人艇の攻撃を撃退しようとし、戦闘は20分間続きました。ロシア軍は10隻のうち4隻を破壊をしましたが、 5隻目の無人艇が船尾に衝突し、船が動けなくなります。その後、6、7、8、9隻目の無人艇が船の左舷側の船央中部と船尾に近い部分を交互に攻撃し、船は片側からの大量の水の流入により、傾き転覆。 9隻目の無人艇は前の攻撃によって空いた穴に侵入し、船のほぼ内側で爆発しました。

セルゲイ・コトフが無人艇を発見して戦闘が開始されてから船が完全に沈没するまで、40分強が経過していました。乗組員は救命いかだを使って船を離れ、すべての機密文書と兵器を含めた機密機器の一部も退避させました。最後の10隻目の無人艇は沈没するセルゲイ・コトフを監視、沈没を確認すると随伴するタグボートを攻撃しようとしましたが、乗組員によって破壊されました。セルゲイ・コトフが自爆無人艇の攻撃を受けるのは実は今回が二度目であり、2023年9月14日に一度攻撃を受けています。この時は被害の程度は不明だったのですが、今回、航行する様子が捉えられていたことから、軽微な損傷だったのが推測できます。しかし、今回は総勢10隻の攻撃によって、完全に沈没しました。

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自爆無人艇による黒海艦隊の損害は今年で3隻目になりますが、注目すべきは3隻全てが沈没している点です。自爆無人艇による攻撃は2022年9月に始まったとされていますが、艦艇に損傷を与えはするものの、沈没には至っていませんでした。セルゲイ・コトフが今回、2度目の攻撃で沈没したように、修繕可能な損傷に留まっていました。しかし、今年に入ってからはことごとく撃沈に成功しています。その鍵が飽和攻撃になり、2月1日に撃沈したミサイル艇イワノヴェッツの攻撃には少なくとも4隻の無人艇が、2月14日に撃沈したロプーチャ級大型揚陸艦シーザークニコフでは少なくとも3隻の無人艇が関与していた事が分かっています。ウクライナ軍が使う自爆無人艇のMAGURA V5には200kgの爆薬が積まれていますが、大型艦を沈めるほどの威力ではありません。しかし、複数隻による攻撃でかつ、脚を止め、同じ個所を集中的に攻撃すれば、沈没させる事は可能です。これまでの3隻もそのように攻撃し、沈没させています。セルゲイ・コトフに10隻の無人艇が関与していたことから、前の2隻もそれに近い規模の数が投入されていたかもしれません。黒海艦隊はこの飽和攻撃に対し、現状、有効な対抗策が無い事は明らかです。

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黒海艦隊哨戒艦セルゲイ・コトフの沈没は自爆無人艇10隻による飽和攻撃だった
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