アフガニスタン南部の要衝であるヘルマンド州の州都ラシュカルガを巡るアフガニスタン軍とタリバンの戦闘が激化。タリバンは市内の国営放送局を占拠するなど既に複数地区を占拠、ラシュカルガは陥落の危機に瀕しています。この部隊を指揮するのがタリバンの司令官マウラウィー・タリブであり、彼は昨年釈放されたタリバン兵捕虜5000人の一人になります。
タリバンの最高幹部の一人であるタリブは2020年、チェックポイントを通過しようと際に捕まり、他の多数のタリバン兵捕虜と共にバグラム刑務所に入れられます。当時、アフガニスタン政府とタリバンとの間ではアメリカ政府主導のもと、和平交渉が進められており、タリバンによるアフガニスタン国内のテロリストの取り締まり、米軍の撤退という条件のもと和平に合意、その一環で、タリバン兵捕虜5000人とタリバンが捉えている囚人1000人との捕虜交換に合意します。しかし、これは米国政府が頭越しに合意したもので、アフガン政府は捕虜の交換に関して再検討するように求めます。しかし、タリバンが和平の開始を渋ったため、当時のトランプ政権はアフガン政府に捕虜交換に合意するように圧力をかけ、結果、タリバン兵捕虜5000人と囚人1000人の捕虜交換が行われ、タリブは僅か数カ月で解放されることになります。捕虜は釈放の際に、戦いに戻らない約束をしましたが、もちろん、こんな約束をタリバンが守る筈もなく、タリブを始め多くの兵が戦場に戻り、現在、ヘルマンド州を陥落させようとしています。 南部の要衝であるヘルマンド州はアフガニスタン紛争開戦以降の激戦地の一つでアメリカ軍とイギリス軍はここで10年以上にわたりタリバンと戦火を交え、制圧した地です。
タリバンは劣勢になっているアフガニスタン政府軍の状況を利用して、7000人の囚人を釈放すれば3カ月間の停戦に応じると申し出ています。兵站が崩壊しているアフガン軍にとっては3カ月という期間は体制を整える絶好の機会になりますが、7000人ともなれば一個師団規模の戦力になり、みすみす敵の戦力増強を許すことになります。またタリバンが3カ月の停戦を守る保証もありません。アフガニスタン政府は前回の反省を踏まえ、これには応じないだろうと目されています。
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https://www.wsj.com/articles/taliban-commander-who-led-attack-on-afghan-city-was-released-from-prison-last-year-officials-say-11628010527
https://www.arabnews.com/%20node%20/%201905721%20/%20world